「「諦めず、最後までこの国を見捨てずにやろう」」シン・ゴジラ hhelibeさんの映画レビュー(感想・評価)
「諦めず、最後までこの国を見捨てずにやろう」
「凄い」と思うのに、映画が始まって1分もかからなかった。
なんだか分かんないけど、映画の途中で何度も込み上げた。
エンドロールの間は、ずっと泣きそうだった。
終わった今も、思い出すと泣きそうになる。
っていうか、レビュー書きながら泣いてる。
なんでだろう?
ゴジラも特撮も今まで全く観たことないし、興味もなかったのに。
たとえCGや特撮が粗くたって、何人かの登場人物に違和感があったって、こんなにスケールが大きく、強さを持った映画は滅多にない。
それを実現したのは、映画の真ん中に庵野秀明という「意思決定者」がいるからだろう。
映画の中で石原さとみが「アメリカでは大統領が決める。日本は誰が決めるの?」と言うが、日本のあらゆる問題は「組織の意思決定者を分からなくするシステム」にあると思う。
そのシステムでは、こんな強度の映画は決してできない。
自社の顔とも言うべきコンテンツの新作を庵野秀明に任せ切った(と思う)東宝も素晴らしいと思う。
今まで見たこともないような映像がいっぱいあった。
知ってる街が、ビルが、電車が、橋が、本当にあんなふうになる光景。
ゴジラが火炎と放射線で東京を焼くシーンで涙が出た。
なんで泣いてるのか分からなかったが、人は「あまりにも圧倒的なものを見た時に泣く」というシステムになってるんだと思う。
あの、恐怖とも、切なさとも、高揚感とも違う、でもその全てが含まれたような感覚。
ゴジラは絶望や恐怖や人間の愚かさの象徴で、
日本がそれに蝕まれて死ぬのか、
ボロボロになっても自国では解決できず、他国に核を落とされることでしか終わらせられないのか(太平洋戦争と同じように)、
それとも、あらゆるしがらみや葛藤にもがきながらも、日本人の力で日本の危機を解決することができるのか、
という映画だと思う。
自衛隊がどうの、政府がどうの、原発がどうのみたいな矮小な話では絶対にない。
そういう問題を全部認めて、絶望して、絶望して、絶望してもなお、「日本を諦めないでいられるか」という映画なんだと思う。
そして、今、こんな映画を作ろうという気概を持ち、あらゆるしがらみや葛藤を乗り越え、こんな強度の映画を完成させ、超大作として公開できる日本を、私はまだ諦めずにいたいと思った。
どうか大ヒットしてほしい。