「惜しい!」バケモノの子 rollcheeseさんの映画レビュー(感想・評価)
惜しい!
舞台やテーマは良いと思うのだが、随所随所雑に感じる。
一郎彦をラスボスにするなら幼少期にもう少し主人公と関わらせても良かったのではないか?せめて幼少期の二郎丸と主人公の交流シーンに一郎彦を混ぜ込むだけでもいいので、彼の心の闇と主人公との対比をもう一押し描いて欲しかった。ラストの暴走で、変化した鯨に牙が生えさせるなど細かいこだわりを感じる点もあったので残念。重要な役回りをさせた割には見る側の想像に頼る部分が多い印象。そもそも本を読ませて白鯨につなげたのは強引だったような、主人公と白鯨に関する会話をさせる、などの前置きでもあったなら気にならなかった。そもそも字が読めたのは何故。
ヒロインの周りも残念だった印象。元々この監督のヒロイン像は好みじゃなく今回も合わなかったのだがそれ依然にヒロインが物語に過剰に関わりすぎているのではないかね。ボーイミーツガールが主軸なら正しいだろうが、父と子がメインテーマなら、随所随所ヒロインではなく主人公か熊徹、本当の父親などに言わせたほうが・・・・・・と感じる台詞が多かった(ラストの地下鉄シーン、一郎彦への説教は特に)。ヒロインの役割を人間界と主人公の架け橋、心の闇を受け入れる存在くらいに定めてくれれば過剰感は和らいだと思う。主人公の心情面の表現も、ヒロインの関わりや言動に隠れていて、成人してからの主人公の心の変化がわかりづらい気がした。
他にも熊徹が心の剣になるくだりやラストシーンは感動的なのに説明不足なせいで、涙をこらえながらもなんでそうなった?が頭に浮かぶ。惜しい。自分の物分りが悪いせいならごめんなさい。でもよくわからなかった。何であの剣でぶった切ったら一郎彦は助かったのだ??主人公切るとき躊躇い無さ過ぎるだろ。というかあのあたりの主人公や熊徹、ヒロインの状況把握能力が高すぎて、見ているほうはついていけなかったぞ。
そういえばバケモノ界と人間界が簡単に行き来可能っぽいのに、ラストで主人公が二度とバケモノ界に行くことはなかったという結論はバケモノ界に愛着が出てきていた自分としては残念だった。
人生の半分近く世話になった世界をあんなあっさり置いていけるのかなあ、と寂しい気分になってしまう。もう少しどっちで生きていくか悩んだり、人間界、バケモノ界への愛着なんかがあれば良いのに。(父親とのやりとりがそれならわかり辛かったな)せめて人間界に戻ってくる主人公が後ろを振り返りそうになるくらいの軽い演出でも良いので主人公とバケモノ世界との繋がりを一目瞭然でみせてくれても……ここまでくると完全に好みですね。
難癖ばかり並べてしまったが面白かったです。俳優の方たちの熱演に、愛らしいキャラクターたち、説明が少なくても勢いで楽しめるストーリーに、良い音楽、鯨をはじめとする映像の美しさ。夏休みにふっと観るにはもってこいのアニメーション作品。ただもう少し、もう一押しあったらめちゃくちゃ面白くなりそうなのに!つまり惜しい!!
そんな映画でした。