「広瀬すずが可哀想」怒り hiropuさんの映画レビュー(感想・評価)
広瀬すずが可哀想
個人的に女性に対する暴力的表現が好きではないのがあり、まるで『4月は君の嘘』からそのまま続投したような(予告編しか見てませんが)広瀬すずのその清楚さが、物語中盤であまりに理不尽な暴力によって、実に悲惨な形で失われてしまうのが非常に辛く思えました。
見ているこっちまで深い傷を負ったような気分になります。
話の流れ、広瀬すずの演技、そして現実と切り離すことが出来ない沖縄の米軍基地問題。全てが絶妙なバランスで絡み合い、観るものの心に暗い影を落とす強いシーンになっています。李相日監督、むごい。そしてすごい。ここまでインパクトのある描写はなかなかにない。
ただ、一方でこのシーンって本当に必要だったのかとも思います。というか、この事件自体が。
というのもラストで宮崎あおいサイドと妻夫木聡サイドは八王子事件の残滓による苦難を乗り越えて救済されますが、広瀬すずサイドは全く救済されているようには見えない。
僕は原作の小説を読んでいないので、あくまで推測の話になりますが、小説であれば広瀬すずの心情も描かれていたのではないでしょうか。小説は地の文で心を語れるのでそこで何かしらの救済があったのかもしれないと思っています。
ともあれ映画では、彼女は中盤からフェードアウトしてしまって、その葛藤も見ることが出来なかったので、結局その悲しみは置いてきぼりです。『魂の殺人』とも言われているようにあの暴力シーンは第二の殺人事件でもあったように思うんですけどね。(まあそこからの救済を描くとなると、三つものサイドを回していたら圧倒的に尺が足りないか・・・)
いっそ、広瀬すずサイドは母親との確執の話とかにしてしまえばよかったのにとも思います。宮崎あおいサイドはちょっとぎくしゃくした親子で、妻夫木聡サイドはいい親子であるから、広瀬すずサイドは思い切りギクシャクした親子で。バランス取れると思うのですが。
と、キリがないのでこの辺にします。
なんだか難しい映画でした。結局「怒り」のタイトルってどういう意味だったのでしょう。別に怒りの感情が全ての映画でもなかったですし。
犯人の怒りが波及して周囲の怒りの感情を呼ぶみたいな話でもなかったし、怒りの感情を乗り越えるにはどうしたら良いのか的な教訓の話でもなかったしなあ。
難しい。とりあえず役者さん達の演技にはアブノーマルな緊張感があって、それはとても感動出来ました。
決して良い話ではありませんが、でも良い映画でした。