みんなの学校のレビュー・感想・評価
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極めて難しいテーマ。共感できずとも見るべき
本当に面白かった。
巷に溢れる臭い演技や演者に飽き飽きして、偶にこういうドキュメンタリーを見るとズガンッと胸を撃ち抜かれるような気持ちになる。小学校時代のことを色々思い出しながら見ていた。
本作は大空小学校というインクルーシブル教育を取り入れた学校のドキュメント。障害のある子も問題のある子も同じ教室で学ぶ。これは見方によっては本来もっと勉強出来るはずの子が他の子の影響が足かせとなる可能性もある。分かれて学ぶ、一緒に学ぶ、どちらが良いかは人の価値観に委ねられるが、国は現在インクルーシブ教育を推進している。この教育を受ける機会をどう捉えるかは極めて難しいテーマであり、本作では皆が平等に受けられる教育を目指す。根幹にあるこの方針に共感出来ずとも見たほうが良い。
舞台は大阪の大空小学校、大阪弁なので他地域の方はちょっと引いてしまうかもしれないが、自分は大阪で生まれ育ったので違和感はなかった。
大筋では前述した方針で学校運営をする木村校長に寄り添った形で進行していく。小学生達は汎ゆる問題を抱えている、障害がある子はいる、騒ぐ子はいる、家庭の事情で登校できない子、そしてそれらを面倒見る子。保護者。そして先生の失敗や反省、歓喜。全ては日常に溶け込んで進むが一つ一つの意味はとても重い。
作中、失敗を精算し、感情的に大人になろうとする子と剥き出しの感情を押し付ける子の場面があり強く印象に残った。自分はブルリと身震えてしまい、少し泣いてしまった(ネタバレはしないので見てほしい。自分が小学生時代を思い出したのはこういう細かい既視感があったから)。
思想や言葉遣い、結論の付け方など、なにかにつけ人を選ぶ作品ではある。が、上映会等機会があれば見てほしい。自分は市役所の上映会でみた。
本物の一瞬の積み重ね
校長先生が仰っていた『ほんまもんのこの一瞬』が日々積み重ねられ、上手くいく一瞬も、上手くいかない一瞬も、その中でみんなが学んでいるのが、みんなで作るみんなの学校だ。
その一瞬は、どの学校にもあるだろう。
その一瞬の点を、どう繋げていくかは、社会の真価が問われるところだ。
その一瞬一瞬を繋げる実践を、地域を巻き込みながら、一つの学校を単位として継続し、理想を現実化している姿を公開していただいた『みんなの学校』の在校生、卒業生、教職員、関係者の皆さん、地域の方々に、敬意と感謝を申し上げたい。
みんなが安心できる空間。
等身大の作品
全員で見落とさない。
私が観たのも名画座だったが全国で上映会が続いているらしい。
思うにこの作品を(前にも他作品で書いたけど)、道徳の時間に
子供達に見せたらどうだ、と思う。映画好きや親が料金を払い
観るのも結構だが、小学校に通う子供達がこういう学校をどう
思うか、自分も通いたいと思うか、貴方の両親なら何というか
ちょっと聞いてみたい。問題のある子も特別支援が必要な子も
同じクラスで皆一緒の時間を過ごす。問題を起こして学校から
逃げようとする子を宥める子供も、手を貸す子供も、この学校
のコンセプトである校長先生の理念に従い、全員で即行動する。
さらに保護者や近隣住民も揃って学校に協力する。つまり地域
全員で子供達を見守っているのだ。そしてそれは反抗や暴力を
繰り返す子供に対しても平等である。皆が通える学校でなければ
公立学校の意味がないと校長先生は繰り返す。まったくその通り。
当たり前のことなのに目から鱗なのは、今の学校が、あまりにも
その教育理念からかけ離れてしまっているからだという気がした。
大空小学校に転入してくる子供達は、他校で上手くいかないとか
受け入れてもらえなかった、という子が多いようだが、それって
緊急搬送される患者をたらい回しにする救急病院のようなものだ。
面倒なのを受け入れてもし何かあったら訴えられちゃうから。と
いう姿勢が効率よく運営するための最重要課題のように聞こえる。
他校から転入してきたのは生徒ばかりでなく教師も同じで、最初
ビックリしている様子や徐々に慣れていく姿が子供たちと重なる。
みんなで学校をよりよいものにしよう。というスタイルが、時に
笑いを誘い、感動を呼び、苦悩を招き、失敗を繰り返し、何度も
何度も考えて考えて、子供たちも一つの答えを出す。その過程は
校長先生を初め校内を伝達する形で繋がって誰一人見落とさない。
これらを可能にする先生方の大変さがイヤというほど味わえるが、
どの先生も前向きで常に子供達を意識している姿が印象的だった。
(これなら不登校もゼロになるのが分かる。大人も学べる学校だな)
多くの人に見てほしい
「次は自分のために頑張れや」
『みんなの学校』ふつうの子も、特別支援の対象となる子も、自分の気持ちをコントロールできない子も、みんな同じ教室で学ぶ、大阪市立南住吉大空小学校を一年に渡って追ったドキュメンタリー。
大空小学校では一人ひとりが能力に応じて大切にされる。担任だけではなく、教師、 アシスタントティーチャー、ボランティア、パトレンジャー、大人達が情報共有しながら関わり、大人も、教室の子ども達も成長する。クラスメートは、反抗して反対言葉を使う子のことを、いち早く見抜き手を差し伸べる。
木村泰子校長は子どもと向き合い、受容する。たったひとつの約束「自分がされれて嫌なことはしない、言わない」を侵した時、子どもは(時には教師さえも)やり直しをしに校長室を訪れる。子どもを支える輪が教室から地域に広がっていく。地域に開かれた大空小学校には、今の社会に足りないものがある。
今まで受け容れられないできた経験や家庭環境から通学に集中できなかった子が、遂に小学校卒業を迎える。遅刻したり、暴力を振るったり、その都度子どもに向き合ってきた木村校長が彼にかけた言葉は「次は自分のために頑張りや」だった。
どうしても見たかったこの映画を、幼い頃から知っているひとりの少年の事を思いながら観た。もし彼にこのような出会いがあれば、受け止めてくれる居場所があったなら。せめてこれからの人生で心が安らぐ生き方ができれば。映画そのものへの感動とは別に、涙が止まらなかった。
みんなに観てほしい
理想の学校が現実にあった!
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