劇場公開日 2015年2月21日

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女神は二度微笑む : 映画評論・批評

2015年2月17日更新

2015年2月21日よりユーロスペースほかにてロードショー

夫に逃げられた妊婦ヒロインが変貌を見せる、インド映画の新機軸サスペンス

ファーゴ」の警察署長以来久々の魅惑的な妊婦ヒロインの登場だ。その名はヴィディヤ(ビディヤ・バラン)。行方不明の夫を探すためにロンドンからインドのコルカタへやって来た。彼女は、「ファーゴ」の警察署長と同じく事件の謎解きに挑む捜索者であると同時に、夫の失踪という悲劇に見舞われた被害者でもある。その二面性が映画をすこぶる面白くしている。

被害者としてのヴィディヤは誰もが同情したくなる女性だ。捜索の初期段階で浮かび上がって来る夫の正体は、素性を偽って結婚したあげく臨月の妻を捨てて逃げた詐欺師のような男だからだ。一方で捜索者としてのヴィディヤは誰もが舌を巻くほど優秀だ。コンピュータを自在に操り、子供や老人から情報を引き出すテクニックもうまい。また、協力者の新米警官をたきつけて不法侵入を働く度胸もある。そんなヴィディヤの最大のチャームポントは、捜索者の顔が被害者の顔に勝っていくところだ。夫に逃げられた哀れな妊婦のイメージは、次第に強くて賢明な理想の母のイメージに変化していく。それにつれて、周囲の人間や我々観客がヴィディヤに抱く感情も、憐れみから畏敬の念へと変わる。邦題に謳われた女神(ヒンドゥー教の戦いの女神ドゥルガー)を前にした時のように。

ヒロイン以外にも見るべき要素は盛りだくさんだ。「ボーン・アイデンティティー」ばりにスケールが広がっていくサスペンスフルなストーリーと香港ノワール風のストップモーションを交えたテンポの良い演出は、インド映画の枠組みを超えたグローバルな魅力を放っている。そこに、ドゥルガーの祭りのようなローカル色の濃い要素を盛り込んだ点には、ヨーロッパ的センスのラブストーリーにムンバイ独特の弁当配達サービスを絡ませた「めぐり逢わせのお弁当」と同じ巧みさを感じさせる。「めぐり逢わせのお弁当」と同様、本作も「歌って踊らないインド映画」の将来性への期待をかきたてる佳作だ。

矢崎由紀子

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