「【女装癖のある男が、亡き妻との間に出来た子を”母であり父”として育てる姿。それに違和感を感じつつ男をサポートする亡き妻の親友の姿を描いた作品。文化の許容度を示した作品でもある。】」彼は秘密の女ともだち NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【女装癖のある男が、亡き妻との間に出来た子を”母であり父”として育てる姿。それに違和感を感じつつ男をサポートする亡き妻の親友の姿を描いた作品。文化の許容度を示した作品でもある。】
■幼い頃からの親友・ローラを亡くし、悲しみに暮れるクレール(アナイス・ドゥムースティエ)。
残されたローラの夫・ダヴィッド(ロマン・デュリス)と生まれて間もない娘リュシーを守ると約束したクレールは、ふたりの様子を見るために家を訪ねるが、そこにはローラの服を着て娘をあやすダヴィッドの姿があった。
◆感想<Caution 内容にやや触れています。>
ー 私事で恐縮であるが、高校時代の友人で、私に好意を持ってくれる男がいる。
最初は驚いたが、徐々に彼の性癖を理解出来るようになり、私はクイアの性癖を持つ人たちに対する偏見は無くなった、(この辺りは、「アナザー・カントリー」や是枝監督の「怪物」の当方のレビューをご一読頂けると有難い。)-
・今作は、女装癖がある男が、妻を失ってから幼子の為に、”母と父“を演じる姿がややコミカルテイストで描かれている。
・私は、フランソワ・オゾン監督は、クイアの性癖を持っているのではないか、と以前から思っているのであるが、今作を観るとその思いは強くなる。
但し、それを否定する気は全くない。
彼は、人間の性癖を肯定的に描いているのである。
・今作でも、妻を亡くしたダヴィッド/女装の際にはヴィルジニアを演じたロマン・デュリスがその姿を絶妙に演じている。
ー 更に言えば、その彼の姿に驚きつつも、クレールを始めとした周囲の人間はその姿を肯定的に受け入れてるのである。ー
■少し前に、荻上直子監督が公開した「彼らが本気で編むときには。」が公開される前に、この映画サイトで多くのレビュアー(今や、影も形もない・・。)が1を付けまくっていたのを見た時には心底、がっかりした。
映画はクイアの男性(生田斗真)と同居する男性(桐谷健太)の生きる姿を描いた心に沁みる作品であったが、人間性肯定の素晴らしき映画であった。
アメリカに在住されていた荻上監督の発言は今でも覚えている。
”アメリカでは普通に男性同士、女性同士が手を繋いで街を歩いているのですが、日本に来るとそういう姿は見ないんですよね。”
<私は、同性愛を推進する積りは毛頭ないが、人間の様々な性癖を許容する文化の深さって、その国の文化度を示すのではないかなと思うのである。
同性愛者という理由で虐殺される国には住みたくないよな、とも思うのである。
今作は、フランソワ・オゾン監督の懐の深さを感じる作品でもある。>