「トイ・ストーリー4で「人類の営み」を知る」トイ・ストーリー4 けけでさんの映画レビュー(感想・評価)
トイ・ストーリー4で「人類の営み」を知る
トイ・ストーリー4は「人類の営み」がテーマだと個人的には感じた。
『優しさの循環』
ウッディの優しさは過去にアンディから受けた「優しさ」のお陰だと思う。4にはアンディの姿はないが「優しいウッディ」の中には間違いなくアンディがいる。優しさは決して自分1人で構築できるものではなく、今まで出会い関わった人たちから受けた優しさで構築されているのだ。他の人に優しくされた経験のある人は、優しさという存在を知り、また他の人に優しくできる。アンディは個人レベルではなくもっと大きくて広い「優しさ」をウッディに託した。私は自分に優しくしてくれた人達の顔を思い出した。今の私は、その人たちから受けた優しさを周りの人に渡せているのだろうか。そう自分に問いかけた。
『人の想いで人は変われる』
人は自分でしか変わることができず、他人が人を変えるのは不可能だと思っている。フォーキーは当初、自分を「ゴミ」だと言った。ウッディは「ゴミではない。おもちゃだ。」と言い続け、しつこくフォーキーを追いかけては救い続けた。その結果、ウッディがいないラストシーンで、フォーキーはボニーの工作に対して「君はゴミではなくておもちゃだ。そして僕もおもちゃなんだ。」というようなことを言う。その心境の変化のきっかけになったのは間違いなくウッディの想いだ。他人の気持ちや性格を直接変えることはできないが、想いは人を変えるきっかけになり得る。私は自分の考えが変わるきっかけをくれた人達の顔を思い浮かべた。今の自分の内面があるのは自分に影響を与えてくれた人達のお陰だ。いずれ自分も誰かにそんなきっかけを与えられるような人間になりたいと思った。
『世代交代』
時間が流れ人間が老いて必ず死ぬ以上、世代交代は避けては通れない。ウッディはボニーの興味の対象ではなくなっている。しかしそこで不貞腐れず、ボニーとフォーキーが離れないようにアシストし続ける。もう自分の時代は終わったと理解し、認め、受け入れているからこそできる行動だと思った。最終的にウッディは、フォーキーをずっとボニーのそばにいさせることに成功する。そうなった以上、自分はボニーの元から離れる。純粋で美しい世代交代だ。私はまだ退く側の年齢ではなくむしろ引き継ぐ側の年齢だが、何十年後にそのようなことを考えるべき時が来た時は「自分の引き際の理想像」だけは確立していたいと思った。
『変わらないのは みんな変わっていくということ』
「変化を恐れ現状維持を好む」のが日本人の国民性だ。しかし、変わっていくことは恐れるべきことなのか。1995年から2019年の24年間、人類が前を向き情熱を灯し夢や希望を抱き一歩ずつ歩んできたという紛れもない証明がこの時代の変化なのだ。ただ一貫して変わらないのは人々の「想い」だ。人間が人間を想い続け、想いを次の世代へ繋ぐということは変わらない。トイストーリーにおいてもたった一つの「想い」は確実に引き継がれている。アンディからボニーへ。ウッディからフォーキーへ。ウッディは1の時、新入りのバズが邪魔だった。アンディの自分への興味が薄れるのを恐れバズを追い出そうとしていた。そんなウッディが4では、自ら退き別のおもちゃと持ち主の幸せのため奔走する。ウッディの心境も行動も確実に変わった。ウッディとバズの関係も変化した。今までは同じ場所で、二人一組のバディだったのが「物理的に離れてもずっと心は繋がっている関係」に変化した。二人の想いは物理的に離れていても決して変わらない。時代が変わって、人が変わっても「想い」だけは変わらずに引き継がれる。だから私は本当に安心した。それだけで十分だ。今後どこかの機会で自分も誰かに何かしらの想いを引き継げればいいなと思う。
3は確かに素晴らしい作品だった。しかし3と4と比べることに何の意味があるのだろう。3は3で、4は4。全く別の作品だ。例えるなら、同じ親から生まれた兄と弟を全く同じ物差しで測り比較するようなものだ。兄弟でも人間としては全く別の個体だ。それぞれ唯一無二のチャームポイントや才能がある。それを比べるなんて不毛でしかないと思う。それぞれにそれぞれの良い所と悪い所がある。それでいいのではないか。
私は、3という大傑作の後に4を製作し公開しようとしたピクサーの心意気にまず敬意を表したい。そのおかげで2019年に「自分の知らない新しいトイストーリー」を自分にインプットできる機会を得られた。それだけでもう十分すぎるくらいに満足だ。同じ時代を生きられていることに感謝したい。
私は4から「今まで途切れることなく続いてきた人類の営みの尊さ」を思い知らされた。また、作品に詰まっている「想い」の総量は4が圧倒的だと感じた。
4を観て批判ばかりしている人に対して聞きたい。
「あなたは一体4に何を求めていて、4にどうなって欲しかったんですか?」