「アウトレイ爺」龍三と七人の子分たち 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
アウトレイ爺
北野武監督最新作は、お馴染みヤクザが主役…でも、ちょっと違う。
引退した元ヤクザVSオレオレ詐欺。
“アウトレイ爺”たちが大暴れ!
初期の作品の独特の死生観、「アウトレイジ」の強烈バイオレンス。
同じコメディでも「みんな~やってるか!」「監督・ばんざい!」は極めて異色作。
そんな北野武がここまで痛快な娯楽作を作るとは!
話は単純で分かり易く、スカッと楽しめる。
「アウトレイジ」のキャッチコピーを借りて言うなら、“全員老人”。
龍三親分、若頭のマサ、はばかりのモキチ、早撃ちのマック、ステッキのイチゾウ、五寸釘のヒデ、カミソリのタカ、神風のヤス。
やりたい放題で昔気質で時代錯誤なこのジジイたちが結構はた迷惑(笑)
でも、ハチャメチャだけど、一本筋は通っている。
龍三がオレオレ詐欺に引っ掛かった事をきっかけに、悪質な詐欺集団と対立、後先も短けぇ!怖いものなんか何もねぇ!とばかりに懲らしめる様は、天晴れ!
藤竜也、近藤正臣、中尾彬、品川徹、樋浦勉、伊藤幸純、吉澤健、小野寺昭。
全員並ぶと、こうも見事にくたばりそうな面々が集まったもの。(失礼!)
老いても尚ドスの効いた藤竜也、近藤正臣。
特技が早撃ちのくせに手がプルプルの品川徹、座頭市ばりの仕込み刀を持つ「座頭市」キャストの樋浦勉、セスナに乗ると戦争経験無いのにあの時代へ記憶が飛ぶ小野寺昭などなど、ベテランたちが笑わせてくれる。
中でも、“故・中尾彬”が終盤大活躍!?(笑)
高齢化社会の日本、どうやら先行きは明るそう…??
老人たちのカルチャー・ギャップ。
社会風刺にコントみたいなギャグ満載。
その一方、廃れいく仁義、肩身の狭い老人など、ちょっぴりの侘しさ。
それらを、毒気のある笑いで描いた北野エンターテイメント。
最後の最後まで元気なジジイたちの姿は、ひょっとして北野武の憧れなのかも。
墓に入るまでは、ずっと馬鹿やり続けるぜ!
人間国宝になって、万引きで捕まりたいって人だから(笑)