「本広監督の力量不足」幕が上がる 茶虎さんの映画レビュー(感想・評価)
本広監督の力量不足
最初に断っておきます。私はももクロのファン(モノノフ)です。
映画は月に4〜5本観るので、そこそこ映画好きの部類に入ると思います。
なので、ももクロが青春映画に出るというだけで、かなり楽しみにしていた作品でした。
ももクロちゃん達は『ももドラ』や『天使とジャンプ』に比べたら、格段に演技も上達していたし、かなり頑張ったんだろうなというのが画面から伝わります。特に、夏菜子は高橋さおりになり切っていて、アホの夏菜子を完全に封印していました。
そして、黒木華さんの先生役が素晴らしい。大振りでない芝居の中に熱さがこもっていて、さすがでした。
という感じで、ももクロや他の俳優さんの芝居は良いのですが、本広監督の力量不足が否めません。
『踊る大捜査線』の頃から感じてましたが、本広監督はアクション・コメディの演出は上手なのに、いわゆる「感動シーン」があざとすぎるというか、表面的に大袈裟に描きすぎてて、深みがない。
「葛藤してますね!」「感動のシーンです、泣けますよね?」という分かり易すぎる演出を入れてくるので、冷めてしまうのです。子供向け映画ならまだしも、視聴者はそんなにバカじゃないよ、と言いたくなってしまう。
特に今回は、青春映画という題材だし、「それぞれの人が葛藤して、自分の道を見つけて、今を賭けて打ち込んでいく」という、かなり繊細な心理描写が重要なのに、とにかく安易な演出が何回も続く。ネタバレになってしまうので割愛しますが、一人一人の悩みの描き方が単調すぎます。
岩井俊二あたりが作ったら、もっとジワジワと沁みる心理描写が出来ただろうなぁと思ってしまいました。
あと、ももクロネタが多すぎます。サービスなのかもしれませんが、入れすぎていて完全に冷めました。
「ももクロ臭を消したい」と言っていた割に、あれだけ小ネタを入れられると、映画の世界から現実に戻されて、映画の登場人物として5人を見られなくなります。歌のシーンも要らない。さおりやユッコではなく、ももクロが歌っているようにしか見えない。
ももクロのファンではない人にも勧めるか?と言われたら、ももクロありきの映画に仕上がっているので、勧めないです。
ももクロが好きで、期待していた映画だっただけに、辛口になってしまいましたが、ももクロの頑張りは凄く伝わります。もっともっと芝居が上手くなっていく伸びしろを感じました。