「見ごたえのある心理劇」パリよ、永遠に odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
見ごたえのある心理劇
クリックして本文を読む
日本人なら勝海舟と西郷隆盛の会談を連想するかもしれない。コルティッツ将軍とスウェーデン総領事ノルドリンクは政治犯救済交渉などで面識はあったが1944年8月24日の密談は残念ながらフィクションである。パリ破壊命令は実話だしコルティッツ将軍が実行しなかった話はルネ・クレマン監督の名作「パリは燃えているか」(1966年)でも描かれている、破壊しようにもレジスタンスに阻まれたというのが史実だろう。
ル・ムーリスは古いホテルだがナポレオン3世が愛人との密会のために作らせた階段と秘密の扉とは面白い着想だ。パリ解放後、コルティッツ将軍の部屋は連合軍のパットン将軍が使ったそうだ。劇中で重要な意味を持つジッペンハフト法は裏切りを防ぐため親族を人質にするというロベルト・ライが提唱した軍規だがまるで日本の戦国時代と同じ策略まで駆使していたとは驚きだ。
主役の二人は映画のベースとなった舞台劇で300回も同役を演じたという、練りに練られたと言えば聞こえが良いが熱気が失われるリスクもある、フォルカー監督の話では二人は本番以外はあえて一緒に過ごさず距離を保っていたという、真の名優とは凄いものだ、おかげで見ごたえのある心理劇に仕上がっていた。
コメントする