「あの選択をした心情ついて」Mommy マミー だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
あの選択をした心情ついて
グザヴィエ・ドラン監督の第5作。
期待を裏切らないですね。
喜怒哀楽がほとばしり、生命力に満ち満ちた世界を堪能しました。
ごちそうさまでした。
なかなか言葉がまとまらずしばらく寝かせて感想を書いてます。
明るい画面と、正方形の画角
時々挿入される横長の画角。
oasisのワンダーウォールが流れる中、
スティーブが壁を押しやるような仕草をして、画面が広がるシーンに、突き抜けるような多幸感を感じました。
大好きなシーンです。
同じ役者を使うのが好きな人ですね。
でも、皆さんお上手だから、別の人に
見えますね。特にスザンヌ・クレマン。
私はロランスのフレッドと同じ中の人とは思えない。
スティーブをラストで病院に入れたきっかけは、スーパーでの自殺未遂が直接のきっかけだと思います。
だとすれば、ダイアンの願いは、生きながらえて欲しい、なのかなと思います。
自由を奪って管理された世界に閉じ込めてでも、長く生きていて欲しいということ?
でも、スティーブにとっては母のそばで母を守り愛していきたい、自由な世界にいたい、訳で。
ダイアンからは確かな息子への愛が感じられます。でも恐れと憎しみも時々滲んでいる。
スティーブは全身から母への愛を放出しているけれども、その愛は暴力的で支配的で常軌を逸している。若干性愛の香りもする。そこらへんの線引きが難しいのだろうけれど。しかし、笑った顔やワンダーウォールのシーンなんかを見ていると愛しい愛しい坊やにも見える。
カイラからも、また一言では言えない複雑な人間性が感じられた。
かいつまんで説明できない登場人物たちの多面性が、あの結末を選んだ心境を、幾通りも思い起こさせ、その全てが解釈として正しいようにも思います。
作り手が意図した、事象と心情のリンクを味わい、解釈するのが物語を味わう醍醐味の一つだと思うけれども、現実の出来事は事象と心情が簡単に読み解けるものではないです。
事象に対しての思いや狙いが、これこれこういうものですだなんてしれっと提示できるほど我々は単純ではないです。
病院に入れた後のダイアンの描写も、一人になった事を喜んでいるというか肩の荷が下りたような風にも思えるし、でも後悔も口にしているし、断言できるようなもんではないのだろうと思う。
その事を実感させられる映画体験でした。
私はまだまだ人間を学ぶ必要があるなと思いました。
病院に騙して連れて行く車の中で、おそらくダイアンが描いた希望の世界が、幸福そうで、たまらない切なさを感じました。
愛だけでは、どうにもならないのだなぁ、とおもいました。
私はロランスの感想と同じですね。