「傑作確定的な宣伝は許しがたい。」アメリカン・スナイパー 三遊亭大ピンチさんの映画レビュー(感想・評価)
傑作確定的な宣伝は許しがたい。
「アメリカンスナイパー」見ました。
イーストウッド作品は胸糞悪いのが多いから好んでは見ないのですが、敬愛するブラッドリー・クーパー軍師が主演なので見ました。これは面白い。傑作かどうかは微妙。やはりと言うか、ガキを殺したりと胸糞な場面はありました。
今までのイーストウッド作品同様で、今作もストーリーが難しくない。テーマ自体は重めだが、分かりやすくて飲み込みやすい。主人公が殺した人数と、彼が背負っていく十字架の数が比例していく。そして彼は仲間を守るという大義名分の元、取り憑かれたように戦地へ赴き続ける続けていく。そんな彼の様相で一番気になったのが、彼自身が”英雄”や”レジェンド”と言われると、無反応だったり話題を変えたりする。単に人を殺す事自体が嫌なのかなと思っていたけど、殺した人数より救えなかった仲間の数を想ってるんだなという事だった。これは終盤の軍医?との会話で明らかになる彼の葛藤だが、そこまでの2時間を見ての最大の楽しみが、やはり彼の抱える葛藤を見出すことにあると感じた。この映画の持つ意味は、戦争の悲惨さなどという分かりきった事ではなく、戦地に赴いた軍人1人1人の心であると。
ヤバいっす、言いたい事が纏まらないっす。
胸糞についてはガキを平気で撃ち殺したり、ガキの頭をドリルで穴開けたりなんて場面があるけど、それはイーストウッドが映画的に悪戯に仕込んだ衝撃ではない気がする。とは言いつつ、絶対に必要な場面だったとも思う。この作品が賛否両論を呼ぶ点はこういう場面からだと思いました。
あと個人的にグッと来た場面は、冒頭の対戦車砲のガキをスコープから覗く場面。あそこのやり取り自体もごく自然で良かったけど、その会話が終わっていざ狙撃だと集中し、ブラッドリーが鼻をグスっと啜る。そんな細かい所は誰も見ちゃいないかもしれないが、なんか凄ーくリアルに感じた。すごく感心した。封切り前の映画館の特報で、その鼻啜りを見て今作に興味を持った身としては意味のある演出だったと願いたい。
総じて普通に面白いし、悲しい。狙撃シーンも迫力・緊迫感共に満点だし、終盤の砂嵐のゴゴゴッ感もすごかったー。五輪戦士ムスタファのキレと脅威もこの映画に欠かすことができない存在でした。もうちょっと彼の内部も見たかった。アルカイダがアメリカ軍人に懸賞金掛けんだなーとか、オリンピック選手もテロリストになるんだなーとか、ガキでも容赦なく殺すんだなーとか、戦争映画を見ない私にとってへぇ〜な所も多かった。そして最後は悲しいというより、少し悔しい気分になった。けど「イーストウッド監督」「実話」「戦争」というこの映画の三大ワードが一人歩きしている感は否めないし、傑作間違いなしという世間の空気は良くない。見てよかったと思える作品には間違いないのだが。