パレードへようこそ : 映画評論・批評

パレードへようこそ

劇場公開日 2015年4月4日
2015年3月31日更新 2015年4月4日よりシネスイッチ銀座ほかにてロードショー

炭坑ストライキの時代を爽快感たっぷりに貫いた、驚きの感動秘話

伝統と革新。イギリス文化を象徴するこのフレーズに、まさかこれほど当てはまる映画が誕生するとは思わなかった。なにしろ本作は「炭坑労働者」と「同性愛者」が手を組んでムーブメントを巻き起こす、前代未聞のストーリーなのだ。

舞台は1984年。サッチャー政権による炭坑閉鎖案に抗議して全国の組合員たちがストライキに打って出た。機を同じくして、ひとりの若きゲイ活動家は炭坑労働者たちの闘う姿勢に共鳴し、仲間と支援活動へ着手する。多額の募金を集めた彼らだったが、しかし肝心の貰い手が見つからない。そんな中、唯一ウェールズの炭坑がちょっとした勘違いによって受け取りを快諾。事態は大きく動き始める。

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この映画の魔法にかかると、イングランドとウェールズの境界にある巨大なセヴァーン・ブリッジが、さながら異なる価値観を繋ぐシンボルのように見えてくる。80年代のヒット曲に乗ってミニバスでこの橋を渡り、到着先で様々な化学反応を巻き起こすゲイ&レズの活動家たち。とりわけビル・ナイイメルダ・スタウントン演じる村人たちとのアンサンブルがたまらない。偏見など物ともせず、無限に広がるハーモニー。苦難の時代のはずなのに、温かくてガハハと笑い声が絶えず、どっと多幸感が押し寄せてくる。

やがて訪れるコブシを突き上げたくなる高揚の中、本作が提げる「連帯」という言葉が印象的だ。まだネットも普及していない時代、全く異なる世界に生きる者どうしが奇跡的に心を重ね合わせた事実は驚嘆に値する。しかもこの映画には原作すらなく、作り手がネットや映像、書籍を隈なく調べ上げてようやく当事者へと辿り着いたという。その「伝えたい」という使命感もただ事ではない。

作り手の熱意は正しかった。そこまでして発掘すべき史実であることは誰の目にも明らか。本作を観ているとなぜだかとびきりの勇気が湧いてくる。そして否応なしに共感、いや連帯の輪に加わりたくなってしまう。なるほど、歴史は終わってなどいなかった。彼らの伝説は今なおこうして人々の心に火を灯しながらパレードを続けているのだ。

牛津厚信

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