「昭和テイストな作風が北の大地にフィット」起終点駅 ターミナル スペランカーさんの映画レビュー(感想・評価)
昭和テイストな作風が北の大地にフィット
地味でやや古臭さも感じる映画ではありましたが、思いのほか見入ってしまったなぁ、何と言いますか、良い意味での昭和テイストが心に沁みるんですよね。
まあいつの時代に作った映画なんだとバッサリ斬られても不思議ではない映画でしたけど、高倉健的なこんな映画が今の時代に存在してもたまには良いのではないでしょうか。
また枯れた佐藤浩市の演技が渋くてたまらなく良かったぁ、そして凍て付く北の大地には何故か不器用な男の姿が似合います。
そんな時代の遺物と化したような、昭和テイスト漂う男の再生物語は、地味ながらグッと来ましたよ、心地良い余韻漂うラストも好きでした(今時電車であの距離はありえないけど、画的には最高)
まあ冒頭の、25年前の話は少々端折り過ぎたかな、佐藤浩市が演じた主人公・鷲田は、何故家族もキャリアも捨てて尾野真千子演じる冴子と一緒になろうとしたのか、もう一つ伝わってこない部分がちょっと惜しかった。
ただ学生時代からずっと相手の負担になりたくないと一歩引いたところから応援しようとする冴子の健気さは、男心をくすぐりますね、でもそんな女だったからこそ、あんな悲劇が起こったと考えると、ホント切ない、鷲田が続ける釧路での贖罪の日々も概ね納得でした・・・。
しかしそんな鷲田の心を解すきっかけとなった本田翼演じる敦子との交流は、一筋のオアシスと言うか、見ているこちらの心も温まるようで何か良かったなぁ。
よくよく考えれば本来は結構なアバズレ女なはずなんですけどね、本田翼が演じるとただの世間知らずな可愛らしいお嬢さんに見えるのは良いのか悪いのか、まあこれはこれで私的には良かったです、映画的にはよろしくないんでしょうが、逆に歳の差ラブ的にはならない絶妙なキャスティングとも言えて、妙に癒されたぁ。
これも佇まいで哀しみを表現する佐藤浩市が相手だったからこそ成せた業かな。
それにしても、鷲田が作るザンギは本当においしそうでした、揚げたてが食べたい・・・。
そして一人で食べるよりも、二人で食べた方が間違いなくおいしい、しかも相手が本田翼なら尚更ねぇ、それは心も解れるでしょ。
本田翼は喋らないとホントに極上の女だ、喋るといろいろとボロが出ますけど(笑)
やや敦子の家族の話に?な部分が多かったですが、敦子と鷲田、それぞれが再生していく様子は、とても心に沁みて、いい話でしたね・・・ってまあ映画的にはいろいろと突っ込みどころもありましたけど、私は結構好きなタイプの映画でした。