劇場公開日 2015年11月7日

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「男たちよ、逃げるな、戦え」起終点駅 ターミナル りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)

4.0男たちよ、逃げるな、戦え

2015年11月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

何らかの罪咎の意識にあって逃げてきた男が、もういちど、やり直そうと決意する物語。
それほど、珍しい話でもない。

とすると、この映画、どのように観客の興味を引きずっていくかが見所。

若い女に絆(ほだ)されて・・・
<あっ、ほだす、って絆(きずな)って字なんですね>
というだけではつまらないし、そう簡単に絆される男には共感しない。

この映画、同年代(といっても少々歳下なんですが)の男性にとっては、かなり居心地が悪い。

かつての恋人が目の前で自殺した後、その場から逃げてしまう男に、観客としてはどう対処していいのか困惑してしまった。
そう、絵空ごとなら、この恋人の近くで嘆き悲しむとか、そんなことが考えられ、それならば却って感情移入(というか、俺もこうなりたいなぁと無意識で思う)わけだけれど、逃げて、それもホームの階段を五・六段あがったところで転こんでしまうのだから、このような無様な男(自分に近しい男)に対して、どのように感ずればいいのか。

それも、この出来事は昭和から平成に変わるときのこと。
巷では「24時間、戦えますか」なるCMも喧(かまびす)しかったころのこと。
そんなぁ、24時間なんて戦えないよ・・・
と判ったのは、後の事。
このときの、イケイケドンドンをいいことに、男たちは知らず知らずに逃げていた。
そう、思う。

そして、この映画のキーワードは「戦え、鷲田完治」。
つまり、逃げるな、男。

カッコいい見てくれの佐藤浩市が演じているから様になるが、基本的には「逃げている男」の映画。
逃げるな、男。
結構、重く圧し掛かってきましたよ。

でも、映画はちょっとだけ猶予を与えてくれる。

最後、主人公は釧路から東京に向かうのだけれど、それを鉄道で行こうとする。
その時間は長い。
主人公は決意してその鉄路の上にあるけれど、観客(の男ども)はまだ列車に乗らない。
さて、乗る決意はあるのかどうか。
猶予は与えられたようだ。

りゃんひさ