「「見せる」演出に疑問」セッション うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
「見せる」演出に疑問
もちろん、JKシモンズの怪演については、アカデミー賞をはじめさまざまな評価を得ているので、文句はないのですが、ジャズマンにとっての最高の演奏とはなんなのか、もっと分かりやすく提示して欲しかった。
フレッチャー教授が有望なジャズマンを指導するのに「怒り」を利用して潜在能力を引き出す技法は、劇中でも破綻をしてしまい、バンドは空中分解する。
音楽に大切なのは、演者と聴衆が一体となって音を楽しみ、感動を分かち合うこと。過去の名演を紐解いても、テクニックよりも、情念の爆発にこそ、人の胸を打ち、語り継がれる要素が詰まっていると確信しました。
「怒り」は、その場の緊張感や、努力を惜しまないというモチベーションには、良いカンフル剤になるでしょうが、ほとんどの場合は悲劇的な結末しか生み出さない。
主人公が、事故を起こしながらも演奏を続けようとしたその負けん気や、積み重ねてきた努力は認められても、そこに居た聴衆は感動を得られず。
演奏家としての最大の義務は果たされないまま、になってしまう。
それ以前に感じた疑問についてですが、彼らの「良い」「良くない」の基準がなんなのか、分かりやすく映像で見せてくれていたなら、もっと感情移入できていたのではないかと思います。
多くの場合は、ミクロな視点で、パートごとの出来不出来をいじる指導法ばかりの描写に終始していたので、もっとマクロな視点で、イマイチだった演奏が、フレッチャー教授の指導で一気に引き締まるような場面が、なかったことが残念です。
2016.2.29
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