「再リブート」ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション ハルさんの映画レビュー(感想・評価)
再リブート
シリーズ第1作で名作TVシリーズからの脱却を図り非難もあったが大成功。当初はビッグネームを監督に迎えていたのが次第に若手を起用するようになっていったのはトム本人がプロデュースの力量を確立していったからだろう。
今作でより明確になったのはアクションシーンでの生身感をより打ち出してきているということ。公開前の宣伝で常に引用されていた輸送機のドアの外側にしがみついたまま離陸してしまうというスタントを冒頭であっさりと披露してしまうあたりからもそれがうかがえる。個人的にはバイクスタントはアクションの中でも大好物で、近年では『007スカイフォール』や『ボーン・アルティメイタム』が素晴らしい。で今作はというとこれはもう別格というしかない。街中での様々な障害物との対比でスピード感や複雑さを演出している数多のバイクアクションに対し、今作ではより純粋なスピード感を出している。郊外の公道での長いストレートや峠でのワインディングであたかもレースシーンを観ているような気にさえなるあのシークエンスは感動すらしてしまう。何しろトムがノーヘルでハングオンをしているのだし、膝が使えないのでなかなか逃げるイルサに追いつけない描写なども素晴らしい。第2作でジョン・ウー節全開のバイクアクションもあったがあれは無かったことにしたいのか、とは穿ち過ぎだろうが意識はしていたはずだ。
そしてMIシリーズのお約束であり見せ場でもある「不可能と思われている任務」。今回は水中での無酸素での侵入と帰還だが、そうした体当たりのアクションシーンの中ではとうとう埋没してしまうことに。それが意図されたものなのかどうかはわからないが今後はそういうことになるのかもしれないし逆転することもあるだろう。しかも今回のミッションではイーサンが失敗しかけたところをイルサに助けられるという構図になっているから、そうしたこともまた今作の新しい試みだ。大まかに言って今作はこれまでのMIシリーズでの流れをリブートする意図があるのだろうし、IMFの再構築やメインのチームの確立、そしてイーサンと並び立つイルサの登場など今後に生かされる設定が提示された。まだまだやる気なトムに脱帽するよりない。
『知りすぎた男』や『カサブランカ』からの引用など名作へのオマージュとともにこれまでのシリーズ作を振り返りながら突っ走った今作はシリーズ最高作だと思う。