ANNIE アニー : 映画評論・批評
2015年1月13日更新
2015年1月24日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
アニーが大富豪と対等に渡り合う、格差社会ミュージカルの現代版
オリジナルは1977年初演のブロードウェイ・ミュージカル。映画化は82年に続いて二度目となる。今回のリメイク版の最大の特徴は、大恐慌時代に設定されていたオリジナルの時代背景を現代に移し替えたこと。これは、同じく複数回映画化されたブロードウェイ・ミュージカルの「ガール・クレイジー」が、主演のジュディ・ガーランドやコニー・フランシスに合わせてリメイクのたびに設定を変えていったのに似ている。
そのガーランドやフランシスに相当する「ANNIE アニー」のキーパーソンは、10歳の少女アニーを演じるクワベンジャネ・ウォレスだ。オリジナルのアニーのように元気で愛らしい。だけじゃなく、少々生意気でちゃっかりした面もある21世紀のアニーを、ウォレスは高い好感度でナチュラルに演じている。彼女の才能がなければ、おそらくこのリメイクは成立しなかっただろう。
とくにウォレスの嫌味のないタフさが生きているのは、ニューヨーク市長に立候補中のIT長者スタックス(ジェイミー・フォックス)と出会ったアニーが、彼女を選挙戦に利用しようとするスタックスとギブ&テイクの関係を築くエピソード。己の才覚と努力で成功の階段を上ってきたスタックスと、彼に与えてもらったチャンスをいかして未来を切り開いて行こうとするアニーの間に、似た者同士の友情が芽生えていく点が新鮮だ。そんなアニーの自立したキャラクターを、新曲の「オポチュニティ」が象徴的に物語っている。
物語の背景は大恐慌時代、作品が誕生したのはアメリカが双子の赤字に苦しみ始めた70年代後半というオリジナルの「アニー」は、登場人物が持てる者と持たざる者に二分される格差社会のミュージカルだ。ドラマは、持てる者(大富豪)が持たざる者(アニー)との触れ合いを通じて自分の人生に足りないものに気づいていく過程を描く。その骨組みは今回のリメイク版も同じなのだが、持てる者と持たざる者の関係がより対等に近づいている点に、30数年の時の流れを感じた。
(矢崎由紀子)