「アメリカ物語」6才のボクが、大人になるまで。 SHさんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカ物語
いまだにタイトルをしっかり覚えられない自分の頭脳は弱いこと間違いない。しかし、そんな自分でもしっかりと覚えられるタイトルを考えてほしい。危うくこんなにも素晴らしい映画を見過ごすところであった、と怒りすら覚える。
配役を何年もかえずに撮ったことに重きをおいて紹介されていた映画だが、そんな方法論など度外視して、人間関係の描写があまりにも見事で自然と泣かされた。この感覚はちょうど小津の「東京物語」を見た時と同じ。まさに現代アメリカを見事に映したっと映像作品ではないかと思う。
アカデミー賞の授賞式で─、最優秀助演女優賞を獲得したパトリシア・アークエットに皆が祝福しにやってくる─、主演のエラー・コルトレーンも歩み寄るけれどもなぜか近づくことができず─、女優は壇上へ行ってしまい、主演はうなだれ、それを父親役のイーサン・ホークが優しく抱きしめる─、そして女優はスピーチで力強く女性の権利向上を主張する─、まさに映画の中の光景そのものが現実世界でも展開されていて、リチャード・リンクレイター監督がいかに自然のまま丁寧にこの映画を描いたかをうかがえた。ここまで丁寧に描写するためには、同じ配役で12年間が必要だったのだろう。
結構長尺でかなり淡々と展開する物語ではあるが、ぜひともじっくりと見てほしい映画。
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