6才のボクが、大人になるまで。 : 映画評論・批評

6才のボクが、大人になるまで。

劇場公開日 2014年11月14日
2014年11月4日更新 2014年11月14日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー

少年とその家族に訪れる“時間”をとらえ、心震わせる体験映画

映画はただ見るものではなく、体験するもの。いい映画であればあるほどそう思えるものだ。そういう意味でも、「6才のボクが、大人になるまで。」は驚くべき映画である。これほど豊かな、しかもパーソナルな“体験”を実感させてくれる映画はこれまで見たことがない。

映画はそのまんますぎる邦題のとおり、1人の少年の12年にわたる成長を写しとっている(原題は「Boyhood」=少年時代)。ドキュメンタリーではなくドラマだが、画期的かつ奇跡的なのはこれが実際に12年の月日をかけて(毎年数日ずつ)撮影されているということ! オーディションで白羽の矢を立てた少年エラー・コルトレーンがメイソンというキャラクターを演じ、そこには当然、エラー自身の成長やキャラクターが反映されている。12年後にどうなるかなんて、撮り始めたときにはわからない。ああ、こんなにリスクだらけの賭けに出るなんて、リチャード・リンクレイターはなんて勇敢なクリエーターなんだろう。

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2時間40分の間、ことさらドラマティックな出来事が起こるわけではない。なぜなら、映画の主役は“時間”そのものだからだ。「ビフォア」三部作でも人間にとっての“時間”と向き合ったリンクレイターが、それを1本の映画でやってのけている。離婚した両親に振り回されて理不尽な思いをしたり、喪失や孤独、初恋といった感情を知っていくメイソン。そのささやかな瞬間瞬間の積み重ねが、見る者の心を震わせずにはおかないのだ。まるで自分のことのように体験する映画の時間は、またたく間に過ぎていく。1年ごとに変貌し、顔つきも心も精悍になっていく少年の姿に、美しくも残酷な“時”をリアルに感じながら。

そしてこの映画は、少年の物語であると同時に家族の物語でもある。父親と母親、姉にも等しく時は流れているからだ。ひたすらガキっぽかった父は、父としてそれなりの成長を見せる。イーサン・ホークの味わいは絶品だ。一方でパトリシア・アークエットが終盤で吐露する母親の思いはものすごくせつなく、誰もが共感せずにはいられない。

そして人生は続く。メイソン=エラーがつづる別の物語に、再び会える日が来ればうれしいと思う。

若林ゆり

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