劇場公開日 2014年10月17日

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「名優フィリップ・シーモア・ホフマンの最後の主演作」誰よりも狙われた男 mac-inさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0名優フィリップ・シーモア・ホフマンの最後の主演作

2025年3月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

2014年2月に急逝した名優フィリップ・シーモア・ホフマンの最後の主演作。

ホフマン演じるのは、ドイツのハンブルクの諜報機関でテロ対策チームを率いるリーダー役。イスラム過激派として国際指名手配されている青年に目をつける。彼をわざと泳がせることで、テロへの資金援助に関わる大物を狙うのだが。ドイツ警察やCIAも動き出し、結末は……。

面白い!

フィリップ・シーモア・ホフマンのどう見てもカッコ悪いダブついた体型が、この映画のなかではカッコ良く見える。ヘビースモーカーで、酒ばかり飲んで、過去の失敗を引きずっている男が。ありていに言えば体裁を気にせず仕事に命を賭ける姿が、カッコいい。
誤解をおそれずに言うなら、役者として一番あぶらの乗った状態で逝ってしまい役者としては最高だったのでは?

スパイ映画でありながら、誰も死なない、誰も拳銃を撃たない、派手なアクションシーンは皆無。でもこの緊張感、その上とても暴力的なものを感じさせる。

カタルシスがない映画。見終わったあとに徒労感が残る。それがテロとの戦いの現実と言わんばかりに。

ラストシーン、ホフマンが車を降りる。カメラはフィックスで降りたあとの座席を数秒映って、そのあとクレジットタイトルが出てくる。あのなんとも落ち着かない間がこの心象風景として脳裏に焼きつく。

「カタルシスのなさ」までもカッコイイ。

プロの仕事ぶりというところでは、映画「マイアミバイス」を彷彿とさせる。チームがまるで家族のよう。ホフマンの右腕の女性(ニーナ・ホス)がいい味出している。恋人でもなく、友人でもなく、同僚または部下なんだけど、もう長年連れ添った妻のような、その上妻ほど面倒くさくなく、気持ちをわかってくれる。そんなことが仕草で感じる。

CIAの女性(ロビン・ライトがクール!)もいい。アメリカのいやらしさがよく出ている。目的は「世界平和」。そこには一点の曇りもなく言い切る厚かましさ。その言葉をホフマンがクライマックスで使う。皮肉まじりに(このへんも面白い)。

弁護士の女性(「ミッドナイト・イン・パリ」に出ていたレイチェル・マクアダムス)は、まあ~普通なんだけど、なかなか色っぽい。人権派の素人さんという感じがよく出ている。それでホフマン側に取り込まれる。ラストのあの騒ぎ方が見事。止めるウイレム・デフォーに引っ張られて、もう服から胸がはだけるのでは?と思うぐらいの勢いで。あのシーンが彼女の名シーンだと思う。

というわけで、出てくる女優陣も素晴らしい。

と、好きなことを書いたが、なかなかカッコイイ映画でした。

ただ一点、気になったのは、ドイツのエージェントは、英語を日常で話すんかい??

mac-in
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