岸辺の旅のレビュー・感想・評価
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映画賞絡みで初めておちました....
いやぁ久びさに辛い映画でした。
結構期待してたんですよ、カンヌの監督賞に。
予告篇も良く出来てたし、
様々な人々との出逢いで生前の夫を
知っていくという物語の設定も
映画向きな気がしてました。
ただ、
ある視点部門というカテゴリーには、
少し嫌な感じがしてたのですが...。
最初の30分でその予感は、
あえなく的中してしまいましたよ。
行方不明の夫が
突然死後の世界から現れて、
状況説明は一切置き去りのまま。
不在の3年間のお話すら、
無視なのね。
現実と虚構と霊界の境が曖昧のまま、
ふわふわとストーリーが
静か静かににながれていく。
驚愕したのは、
なぜか亡霊を
様々な人たちが受け入れてて、
ともに生活しちゃうなんて(笑)
ロジックも軸もないので、
何だかキモチ悪いです。
あれこういうのあったなぁなんて
デジャブなキブン。
そうだ2月に観た「悼む人」と同じだ。
それでもファンタジーに、
振り切るならいいですよ映画だもん。
けどね妻の虚構なのか、
ホラーなのかも中途半端で。
ギミックな驚きも、
怖さもありません。
幽霊と一緒に過ごしている
深津絵里さんは、
動揺するわけでも
葛藤も描くわけでもなく
終始ふつうの人。
だからなのか、
全く感情移入も出来ずじまいです。
死を受容できない狂気から、
幻覚をみたり死者と会話することもあるでしょう。
けどこんな平穏で妄想してる人
ただのサイコパスですぜ。
加えて亡霊の浅野忠信さんも、何だかふつう。
俳優たちは監督が何をやりたいのか
理解出来なかったのかな。
少しぎくしゃくな様子にみえちゃって、
可哀想な印象を受けました。
唯一5分だけ出てきた、
蒼井優さんは凄かった。
意味のない役柄であれだけの印象が残せるのは、
さすがです。
そんなこんなで、
せめてオチに期待してたけど、
あれれという終わり方で。
忙しいなか時間を作って、観に行ったのにね。
その頑張りも虚しく、後半は久びさに落ちてしまいました。
周りを見渡せば、両隣もこっくりですわ。
映画賞絡みの作品は必ず劇場でみるのがコダワリですが、
年に一回はありますね、こういうの。
頭を撫でた犬に噛まれた、残念感でした。
今宵は厳しすぎて、スミマセン。
夫婦の旅
妻・瑞希が料理をしていてふと後ろを振り向くと、突然夫・優介の姿が。
夫が仕事から帰った一見何気ない光景だが、二人の会話によると、夫は3年前に失踪し、幽霊となって帰ってきたという。
この冒頭数分の奇妙な設定に引き込まれてしまう。
そして夫は妻をある旅に誘う…。
その旅は、夫が失踪していた3年間、何処で何をしていたかを訪ねていくもの。
妻は夫の知らなかった一面を知る…。
個人的な話になるが、もう10年も前に死んだ父の事を何故か思い出した。
家ではどしっと座って無口な父だったけど、外では交友関係が広く、社交的だったとか。
近くに居た人の知らない姿というのは、新鮮であり何処か不思議。
夫婦が旅で出会う夫が生前お世話になった人々。
優介と同じような人も居れば、瑞希と同じ人も。
共通しているのは、死者であっても生者であっても、何か心残りがある。
ここで優介もまたそうなのだと気付く。
優介が瑞希の元に帰ってきたのには、何か訳が…。
3年も夫の帰りを待ち続けた瑞希。
夫との再びの時に安らぎを感じるが、ある日瑞希は、夫が生前お世話になった死者が突然消えるのを目の当たりにする。
夫との時も限りが…。
夫への深い愛情を抑えた演技で体現、凛とした美しさと儚げな愛らしさで深津絵里が魅了。
幽霊となって帰ってきた奇抜な役柄は、個性派・浅野忠信の真骨頂。
生前浮気していた夫。
その浮気相手・蒼井優の出番は僅かながら、対面シーンは静かな火花散る。
淡々とした展開・語り口の中に、ちょいちょいのオフビートなユーモア。
そもそも幽霊となって帰ってきた夫もそうだし、普通に他人と話し、食事する。
「消防のワタナベさん?」の坊さんや、優介が田舎の人たちに宇宙学を講義するシュールさ。
設定はファンタジーで、十八番のホラー的なシーンもありつつ、夫婦の愛と心の機微を静かに繊細に浮かび上がらせる。
カンヌ国際映画祭“ある視点”部門監督賞受賞も納得の、現代の“世界のクロサワ”黒沢清監督が紡ぐ上質の人間ドラマ。
『岸辺の旅』を観た。宮台真司の記事を読んでなるほどと膝を打ち、小野...
『岸辺の旅』を観た。宮台真司の記事を読んでなるほどと膝を打ち、小野寺系さんのツイートに共感した。演出があまり好みではなかったのでぼくにはハマらなかったけれど、主演ふたりの演技が良かった。特に、深津絵里。少女のような雰囲気がとても魅力的だった。
タナトスに引き込まれる。
タナトスに取り憑かれたようなえいがでした。
映画というより、エロス=生きる
タナトス=死ぬ
と言うようにそのまんまでした。
タナトスに引き込まれて自分もそうでありたいと思うなら観てもありかな??
という所です。
中々の安定の演技の浅野忠信は良かったと思います。
「岸辺の旅」を観て・・
3年前に自殺した夫が戻って自宅に来るというファンタジー。夫婦二人で夫が生前暮らした場所を巡るというストーリー。同名小説があるらしい・・浅野忠信と深津絵里の夫婦コンビ。カンヌ映画祭で監督賞を授賞。
大きなスクリーンで!
大スクリーンで観た『八月の狂詩曲』で “映画を浴びる” 快感に目覚めてからずっと映像ジャンキーです。
今はDVDで映画を観るのがやっとなのですが、『岸辺の旅』DVD販売試写会のお陰で、いつもの自宅TVサイズより、かなり大きめなスクリーンで鑑賞することが出来ました。
でも、これは!!
この作品は劇場で観たかったぁぁぁ。。・゜・(ノД`)・゜・。
本当に映像が素晴らしい!!
映画は総合芸術だと、よく言われますが、まさしくその通りだと思わせてくれる作品でした。
照明も効果的でしたし、音楽もズルイぐらいに効果的。(←かなり細かい音まで)
衣装も美術も…全ての要素が監督のもとで一つに合わさって、言葉に出来ない複雑な思いを描きあげていく。。。
DVDの販促企画なのに申しあげにくいのですが…この感動、ご自宅TVサイズで伝わるのかしら??
そう考えると映画って、一期一会な気がします。
どの年代にどの映画を何処で観るかで、印象が違ってくる。
この映画に出会えて良かったです。(。-_-。)
映画.comさん、ポニーキャニオンさん、本当にありがとう。
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ホラーが苦手です。
なんで好き好んで怖い思いがしたいのか??
さっぱり理解できません(笑)
映像で語りかけてくる黒沢清監督の映画は大好きなのですが、怖い思いはしたくない。
毎回ものすごいジレンマなのです。~_~;
今回、良い意味で違和感が画面に同居しているのを見て
映像から“何か”を感じとって楽しむ映画としては、ホラーが一番わかりやすいのかもしれない。。。
そんな風に思えてきました。
追記:一瞬で居なくなるときの雑すぎるカットが、すごく良かったです!!
「質量は0でも“ある”」を感じました。
不思議な夢を見たような記憶を残させる映画
2016/04/19、ポニーキャニオン本社で行われたBD、DVD発売プレミア試写会で二度目の鑑賞。同時に黒沢清監督を招いてのトークショーも行われました。
去年10月にも川崎チネチッタで観たのですが、作中での死者の扱われ方が生きてる人達から見てどういう位置づけなのか釈然とせず、モヤモヤしながら観たのを覚えてます。不思議な世界観で変な夢を見たような記憶のように印象深く残っている。観た人こういう記憶をに残すということはきっといい映画なんでしょうね。
自分は両親がもう鬼籍に入っているのですが、たまに夢に出てきます。この映画の中での優介みたいに普通に生活していて、自分も普通に接している。亡くなったはずの人とまた会えた安心感と夢がさめてやっぱりいないんだと気づく寂しさを感じる。それと同じような感覚を残してくれる映画でした。
二回目の鑑賞では死者の位置づけも気にならずにそういう設定としてすんなり受け入れて鑑賞できました。そうすると雑念が消えて、上で述べたような鑑賞後感を残すことができました。矛盾した設定を受け入れられない人には厳しい映画かも。
それから蒼井優が演じる若い浮気相手の朋子と深津絵里が演じる妻の瑞希が対決するシーンが有ります。表面上静かな言葉だけのやり取りですが、とても見応えのある戦いでした。おっとりした瑞希が初めになんとか必死に攻勢をかけようとしますが、気の強い若い愛人朋子にあっさり完膚なきまでに叩きのめされます。トークショーで黒沢監督は朋子の圧勝で終わりますと役者さんに説明したそうですが、自分には朋子の負け惜しみにしか聞こえませんでした。朋子はまだ優介に未練があって、付き合っていた間も優介はいつか奥さんの元に戻る人だとどこか感じていたのだと思う。どうしても勝てない本妻への負け惜しみで出た容赦無い言葉だったようにしか聞こえなかったのです。とにかく、この二人の女の対決のシーンは見ものです。
それから黒澤監督は原作にどうしても勝てなかった部分として、旅の壮大さだとおっしゃっていました。原作ではもっと時間や場所の感覚がわからなくなるほどいろんな場所を巡るそうですが、この映画のロケは2ヶ月ほどの期間で千葉と神奈川県だけで撮ったそうです。今の日本映画の現状ではそんな壮大な場面を撮るような予算は出ないんでしょうね。それでも綺麗な映像だったし、印象的なシーンもたくさんありました。
あまり理屈っぽく考えず、ゆるい気持ちで観るべき映画ですね。
「雰囲気」、一発勝負。
とにかく「雰囲気がすべて」の一本。
ぶっちゃけてしまえば、この作品には山なく、オチなく、意味もない。
だらだらと旅する、そのどこが岸辺なのかも解らない。
それどころか、何一つ分かるところは無いかもしれない。
ただ、作品全体をを流れる空気・雰囲気は非常に心地よく、嫌いになれないのが不思議な魅力だった。
そこは全体のトーン、明暗、役者の雰囲気が好みかそうでないかだけで分かれるし。
人に勧めるには、正直決して演技派ではないお二方が主役という時点でまず外すだろうし。
何よりメリハリがなくてだらだらと長いし。
「ああ、カンヌで受けるだろうな」と思ったら受賞作(やはり「ある視点」!笑)だったことを知り。
映像の美しさはあれど、とにかくテンポが悪く長い尺に「どこの新人女流監督だ?」と思ったら、黒沢清監督だったことで二度驚いた作品。
まさかこんな話だとは。
レビューを見る限りでは予告編を冗長にしただけという意見が散見されておりましたが、個人的にはそんな印象は皆無です。寧ろ180度逆転させられました。
予告編の印象だと、死んだ夫と別れの為の旅をする、そんな悲しくて陰鬱な旅路の話だろうと。ですから私は泣きに劇場に足を運んた訳ですが、正直驚きました。まさかこんなに前向きな作品だったなんて。
思い切りネタバレから入りますが、これは
「夫との離別を悲しむ話」ではなく、「死、離別を乗り越えて夫との愛を再認識する話」なんです。一見暗いようでものすごく明るい話だったんです。
見終わったあとの爽快感はすばらしいものがありました。
ただ、惜しむらくは恐らく原作が相当長いのでしょう。一言一言の含蓄が深すぎる。聞き逃すとその場面の主題が掴めなくなる。結局私も本編を見ている間は本映画の主題を捉えそこね続け、見終わったあとは漠然と疑問を持つのみだった訳なのですが、その後一つ一つの場面を思い返してメモとペンを片手に分析していくと漸く先述した主題が掴めました。一つの難解な国語の文章題を解ききった様な爽快感があり、その後じわりとこの幸福な物語が脳髄に充満しました。何が言いたいかといえば、話自体、主題自体は大変素晴らしいものであるが、その理解はかなり難易度が高いということです。
私は映画を頻繁に見るわけではないので、映画好きな方なら違う見方を出来るのかもしれませんが、正直茫漠とした視点で見ているだけでは浮気のイザコザシーンぐらいしか解釈が叶いませんでした。あのシーンだけは象徴表現も少なく、かつ単純な二項対立なので至極わかりやすいのです。
その難解さを愛せるなら、本映画は十全にお薦め出来る最高の作品です。
難解故に「もう一度見たい」と思わせる映画でもありますから。
幽霊さえ消えてしまったら空虚しか残らない
鑑賞直後は印象イマイチだったのだが、レビューを書くに当たって
色々と考える内に、段々と好きになってきた作品。
……とはいえ、最初に不満点から書いてしまおうと思う。
監督の前作『リアル 完全なる首長竜の日』でも感じたが、ラブストーリー的要素が入ったり、
露骨な感情表現が入ったりする場面では、途端に陳腐な印象を受けた。
終盤の授業からラブシーンまでの流れとか、最後に出逢う幽霊の最後とか、
示唆的なシーンの多い本作において、これらの場面はカメラワークや台詞が直接的過ぎる気がする。
あとね、あの物理学の授業が、老若男女を惹き付けるほどの面白い内容には聴こえない(苦笑)。
いや単なるイチャモンではなくて、最初の授業シーンはシュールな笑いが感じられて良いけど、
2度目は妻への想いを語る肝心なシーンなので、そこでの説得力が欠けるのは痛い。
この作品、中盤までは凄く好きなのだが、特に終盤になってから上記
のようなシーンが頻出するので、鑑賞後の印象がイマイチだったのかも。
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不満点は以上。ここからは気に入ってる点を。
まずこの映画、幽霊と生者との距離がやけに近い点がユニーク。
主人公の優介は幽霊なのに、フツーに飲み食いするし他人と話す事だって出来る。
妻(瑞希)も妻で、夫から溺死したと聞かされても、あまり悲しんだ様子もなく
「水でっていう気はしてた」なんて素っ頓狂なことを言ったりする。
なんだ、この随所で感じるオフビートなユーモアは(笑)
と思いきや、つうっと背筋が冷たくなるような不気味さもある。
食事の話題だけが聴こえない老人、優介を見つめる子ども、画面外を見つめたまま動かない未亡人……。
その人物が何を考えているのか分からない、得体の知れない怖さを感じるシーンがある。
奇妙なユーモア、微かな不気味さ、夢のように断続的な語り口、
これらが入り雑じって、本作の何とも言えない“味”になっている。
そして、心を動かされるような哀しく優しいシーンも数多い。
ここからはこの奇妙な物語について自分なりに推察してみる。
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誰が言ったかは知らないが、こんな言葉を時折耳にする。
「人間は2度死ぬ。一度目は肉体が滅んだ時、二度目は人から忘れられた時だ」
幽霊らしさの薄い幽霊と旅する瑞希を見ながらふと思ったのは、
上の言葉にもうひとつ死のタイミングを加えるなら、
それは『人から思い出された時』かもしれない、ということ。
「死んだ」と聞かされただけでは大抵、「死んだ」という認識までには至らないものだ。
もしも親しい人が死んだと聞いても、しばらくはその辺に「いる」気がする。
「あの人はちょっと出掛けているだけで、またひょっこり戻ってくるんじゃないか」
なんてことを、ぼんやりと考えている。
だけど、親しい人を亡くして初めて気付く事ってけっこう多い。
あの人はこんな人たちと交友があったのか、
あの人はこんな意外な一面もあったのか、
あの人はこんな想いを抱えて生きていたのか、
あの人はこんな風に自分を想ってくれていたのか、
あの人は自分にとって、こんなに大切な人だったのか。
そこに思い至ってようやく、
「あの人はもうこの世から消えて失くなってしまった」
という事実の重さに愕然とし、打ちのめされる。
人が本当の意味で死ぬのはそんな瞬間だと思う。
心の中でその人が占めていたはずの部分が、
風がごうと吹き抜けるような大きな大きな空洞に
なってしまったのに気付いた瞬間だと思う。
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この映画の幽霊は、
幽霊と接する人の、「あの人はまだその辺りにいる気がする」という想い、
もしくはその人の死を受け入れることを拒絶している心の表れなのかもしれない。
また幽霊にとっては、「死んだ後も忘れないでほしい」という願いなのかもしれない。
新聞屋の老人が微笑み交じりに語った言葉を思い出す。
「僕はきっと、何のつながりもなくなるのが怖かったんです」
物語に登場する幽霊たち。
切り抜きの花を集め続けた老人は、主人公たちと心の繋がりを感じた夜に消えた。
ただの見ず知らずの老人ではなく、喪失を覚えるに足るだけの親しみを与えて消えた。
ピアノを弾けずに死んだ少女は、好きなピアノを好きなだけ弾いて消えた。
少女の姉が長年心に秘めていた後悔が晴れることで消えた。
ぼろぼろになるまで妻を連れ回した男は、「死にたくなかっただけ」と呟いて消えた。
彼は、妻が自分の死を認めてしまうことが怖かったのか?
それとも妻の方が、彼の死を認めるのを恐れていたのか?
そして、岸辺で消えた優介。
優介が消えたのは、そして瑞希が涙を流すのはきっと、
彼女が愛する人の消失をようやく受け入れたからだ。
幽霊さえ消えてしまったらそこには空虚しか残らない。
だけど、その空虚を埋めたいと願うことで初めて、人は再び前に進めるようになるのだろうか。
少なくとも優介の幽霊は、自身の死を足枷にしたまま瑞希に生きてほしくなかったのだと思う。
<2015.10.03鑑賞>.
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余談:
蒼井優、幽霊より怖い(笑)。
カンヌは絶賛しそう
さすがはカンヌが絶賛した映画だけあって、ある程度予想はしていましたが、やはり私レベルが普通に楽しめる映画ではなかったみたいで。
単純にハートフルには描かない、単純に泣ける映画には仕上げない・・・何かいかにも通向け映画って感じがしましたね。
ラブストーリーと言う枠には嵌らない、ラブファンタジーホラーロードムービー?、作品の出来そのものは素晴らしいなと思いつつも、正直凡人の私にはいまいち作品に入り込めない壁みたいなものがあった気がしました。
まず何と言っても、細かい設定を理解するまでに少々時間が掛かりました。
浅野忠信が演じた旦那が幽霊であることは予告編等から分かってはいましたが、周りの人から普通に見えて、普通に生きている者として認識されている設定だったのがちょっとビックリ。
白玉をおいしそうに食べているところから不思議ワールド発動ですよね。
他にもたくさんの浅野忠信状態な人間が登場、こんなホラーでファンタジーな展開をサラリと描く黒沢清監督、凄すぎです。
しかし深津絵里の作った素朴な白玉、おいしそうだったなぁ~。
さてメインとなったのは三年間の空白を埋める旅でしたが、まあ正直見ていて主題がよく分からなくなった瞬間が何度もありました、しかし深津絵里と浅野忠信の演技にはグッと惹き込まれましたね。
やはり様々な想いに決着を付けてから旅立ちたい、人間とはそう言う生き物なんだろうなと改めて思わされましたよ。
そこを普通には描かないところが黒沢清流?、私はやっぱり苦手だなぁ。
まあ綺麗ごとだけじゃなく、ちょっと醜い愛想劇も織り交ぜた辺りなんかは、何気に作品のいいスパイスとなっていましたね。
深津絵里VS蒼井優の女のバトル、短いながらも見応えたっぷりでした、蒼井優の余裕感、あれは半端じゃなかったなぁ・・・。
いちばん怖いのは。
第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞。
さぞや劇場は混んでいるだろうと思えばやっぱりの満席^^;
観方によって好き嫌いの分かれるある意味ホラー的展開に
これが?と思った人も多かったようで、鑑賞後の中高年の
会話が廊下で乱立していた。私的に黒沢清の作品だからと
ある程度覚悟していたので戸惑いはなかったけれど、多分
幽霊が目の前に登場しても平然としていられる人は、その
人自身が死に寄り添い近づいているのだと思う。夫が失踪し
すでに3年が経つのに未だ喪失感と覇気のない雰囲気を醸す
主人公を演じる深津絵里が、突然現れた幽霊の夫をアッサリ
受け容れることからも感じられる。もう待っていたかのよう。
それに対し夫は自身の病を苦の失踪→死を説明し、妻を旅に
誘い出す。目的は何なのよ?と思いながら夫婦と一緒に旅を
する観客は道中で出逢う不思議な人々&出来事に動揺を覚え、
あっけなく境界へと辿り着く。メロドラマとファンタジーが
入り混じった映像と音楽もさることながら、狙い澄まされた
監督の死生観に慄くのだったが、しかし何よりも怖いのは
生前に繰り返された(らしい)浮気がバレて、妻と愛人が対峙
する病院での面会場面。幽霊よりも愛憎が勝るホラーの一幕。
(小松政夫演じる配達員が不気味で優しくて哀しかったわぁ)
死者との弔いの旅。ミステリアスを感じさせない黒沢清作品だったけど、...
死者との弔いの旅。ミステリアスを感じさせない黒沢清作品だったけど、死別者は心の中に生きてるんだ。ってささってくる物が有った。w.浅野忠信、永瀬正敏トークショー。凄く楽しませてくれた。
あの世とこの世の境にて
ところで皆さん、お墓参りって最近行ってますか?
僕は今55歳なんだけど、ふと、思いついた時とか、ちょっと気分を落ち着かせたい時など、お墓参りをするようになりました。今までの人生をふりかえって、「あの時、よく、死ななかったな」と思うような瞬間がいくつもありました。50歳を超えた折に、三回、全身麻酔で手術を受けたことも影響していると思います。
全身麻酔を経験した方なら分かると思うけれど、あれ、麻酔液が注射針を通して(僕の場合はそういうタイプの麻酔でした)体に入ってくるのが分かるんですよね。麻酔液って、ジュワ~っとした感覚で「痛い」のですよ。
おいおい、これ麻酔なのになんで痛いんだよ!と、思った次の瞬間
ー暗転ー
全く意識を失います。
気がついた時はベッドの上。酸素吸入。左腕には点滴。指先には心拍数を測る器具。一番違和感を覚えるのは、尿道に細く滑らかなガラス管が差し込まれていること。その先を辿って行くと……、まあ、ヤボな話ですね。
そういう体験を僕は3回やってます。
三回目の手術が決まった時、「ああ、そろそろ、あっちへ行く準備しとくべきかな」などと思い、入院前に部屋の整理をやっておきました。
手術の当日、僕が一番嫌だったのは、尿道に管を差し込まれることではなく、あの麻酔液が体に入ってきて、ジュワ~、と痛くなり、その後「昇天」するような一連の工程、あの感覚を、体と意識が覚えていることでした。
つまりは、人工的に「臨死体験」を無理やりさせられるわけです。
もちろん、病院、医師、看護師など、「切る側」から言わせれば「全身麻酔」の危険性など屁でもない、のでしょう。でも”まな板の上の鯉”状態の「斬られる側」としては、かなり厳粛な気持ちになるのです。
人工的に意識を失う「その瞬間」
その後、万が一ということがあって、もう自分は「こっちの世界」には帰ってこれないかもしれない。そんな風に思ってしまうわけですね。
そんな訳で、自分と、あの世の世界が、随分と身近に感じられるのです。すぐ隣の席に「死」という相棒が佇んでいる。そんな雰囲気を感じることがあるのです。僕が時折墓参りをするようになったのは、そんな体験があってからのこと。墓石を水で清め、花を手向け、お線香を焚いて、「もしかしたら、そっちへいくかもしれませんので、その時はよろしく」と手を合わせます。
なんだか、ふうぅ~っと、心の波が穏やかになってゆくのを感じる、その瞬間が僕は好きです。
さて、映画の話でしたね。
本作は夫を亡くした奥さん、瑞稀(深津絵里)が、ひょっこり、あの世からトリップしてきた旦那さん、優介(浅野忠信)と、思い出の場所と人を訪ねて
旅する話。
こういう手のお話は、ミステリーにも描けるし、それこそ妖怪にも描ける。いろんな手法があります。
本作では、旦那さんを演じる浅野忠信さん。この人の役者としての「素材の良さ」を黒沢清監督がまるで三ツ星シェフのように、料理するんですね。
それは深津絵里さんという女優さんも、一緒。いい素材をいい腕の料理人が、適切なレシピにそって作れば、極上の料理が出来上がる。
当たり前のこと、下ごしらえをおろそかにしない。実はそれが一番難しいんだけれど、黒沢清監督はやっぱり、いい仕事してますねぇ~。
映画のタッチが初めから終わりまで、全く変わらない。このお話はファンタジーであるのだけれど、変な特殊効果に頼ろうとはしない。あくまで実写。そして実に巧みな編集で、亡くなった優介が、時には現れ、時にはフッと瑞稀の前から姿を消すのです。
この辺りうまいなぁ~。
ストーリーは大変穏やかで、観た後、幸福感や、ちょっとした切なさが残る作品です。ただ、観客の心を鷲掴みにするような、ウムを言わせぬような「迫力」に繋がっていないのが、やや残念。でも、浅野忠信さん、深津絵里さんのファンでしたら、もう、間違いなく本作は「三ツ星」ですよ!
別れた人への思い
評価が割れているようですが,予告編映像が非常によかったこと。深津さんも,浅野さんも好きなので期待してました。で,非常によかったです。二人の魅力によるところが大きいのかもしれませんが,全編にわたり,さまざまな人たちが抱える別れた人への思いがあふれ,淡々とした日常風景の中で,夫婦という他人が連れ添うことの不思議,喜びがじっくりとしみました。
全82件中、41~60件目を表示