「美しい、儚いものに宿命的に共存する「怖い」の表現。」岸辺の旅 Atsuhitoさんの映画レビュー(感想・評価)
美しい、儚いものに宿命的に共存する「怖い」の表現。
冒頭、クールで強く生きているように見える深津絵里さん演じる主人公が、死んだ夫が突然現れたとたん泣きつくオープニングで一気に引き込まれた。
トラウマに対して素直に悲しむことって、心がタフじゃないと出来ないと思う。そんな悲しみの中におかれた素直で情熱的な女性を深津絵里さんはまさにぴったりという感じで演じているし、夫役の浅田忠信さんも、シャイだけど強いロマンチックな男性を、過剰になり過ぎない演技で演じているなぁと思った。2人の演技が、シュールな作品になんとも言えない気品のようなものを添えていると思う。
時系列や場所などがシーンごとによくわからないように展開することが、この世とあの世の近さを生々しく感じさせていると思う。また怖いとも感じさせるような急な照明の演出が、決してきれいなだけではない日常的な会話の貴重さ、美しさを際立たせていた。当たり前のものの美しさをチープさを出さずに描く事ってきっと凄く難しい事なのだと思う。
全体的に非常にシュールな台詞、展開なのに、すごく気品があって儚くて、この話の世界に引きこまれました。素晴らしい映画だと思います!
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