「原子力発電の光と影」天空の蜂 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
原子力発電の光と影
福島の親戚から毎年美味しいお米が送られてくるが、東日本大震災後、暫くの間、安全証明書付きだった。東日本大震災での原発事故の影響の長さ、原発事故の恐ろしさ、原発の安全性について考えさせられる。
東日本大震災での原発事故を境目に、原発の安全性に対する日本人の考え方は大きく変わった。本作は1995年の東野圭吾の同名作品が原作であり、当時、映画化されていれば、原作の原発安全性是非の問題提起は絵空事として捉えられただろう。東日本大震災後の2015年に映画化されたことで、原作の問題提起はリアルに映像化されている。
本作は東野圭吾原作の社会派サスペンス。爆薬を搭載した最新鋭ヘリを原発上空に静止させ、日本中の原発破壊を要求する犯人と、警察、自衛隊、そして、ヘリ設計者との虚虚実実の攻防戦を熱く描いた、見応え十分な王道の娯楽作品である。
それだけではなく、本作は、原発の安全性、是非に鋭く迫っている。設定は1995年の日本。当時、原発は日本の電力政策を担うホープであり、その安全性は絶対的なものというよりは、疑問を持って議論をすることさえタブー視されていた。当事者のみに封印されたトップシークレットだった。
しかし、東日本大震災での原発事故で我々日本人は、原発の安全性が如何に脆弱なものなのかを思い知らされた。そして、未だにその後遺症に苦しんでいる。そういう現在の視点からこの作品を観ると、改めて原発のひ弱さが露呈され、東日本大震災の記憶が蘇ってくる。そういう意味において、1995年ではなく、2015年に本作が映画化された意義は極めて大きい。
真実には二面性がある。表と裏がある。原発は電力を供給する便利な道具だという“表の顔”ばかりに目を奪われるのではなく、安全性という“裏の顔”も忘れずに見続け、検証を怠らないことが大切だろう。
原発事故というとJCOの事故を思い出します。
「被曝治療83日間の記録」(NHK取材班)という名著があります。文庫でも出ていましたが、ぜひ図書館で借りて、改訂前の元の本を読んでみてください。