「予期が現実になる恐怖。」天空の蜂 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
予期が現実になる恐怖。
東野圭吾原作の社会派サスペンス。1995年原作発表当時はまさか
今のような反原発運動もなく、どころか大きな関心すら持たれて
いなかったのだろうことを考えると、まるで予期したかのような
展開は凄いよなとただただ驚いてしまった。3.11が起きて以降は
原発への関心は高まるばかりだが、クリーンで安価な電気が安全
に供給されるのが当たり前だと思っていた国民に突き付けられた
大問題は、本当はもっと以前から提起されていて当然だったのだ
と今作で改めて思った。そんな意味では非常にタイムリーな作品。
ただ内容は緊張感溢れるサスペンスアクションで構成されており
大作映画に相応しいエンターテインメントに豪華俳優陣が犇めき、
前半と後半で話は大きく変わる。前半はヘリ設計技師の息子搭乗
のまま原子炉上空へ上がってしまったヘリからの救出作戦が主で、
無事に救出された後の後半は犯人の見えない動機の真相へ一気に
加速する。ストーリーは緊張感を保ち続け、ヘリも上がったまま、
を考えるとさすが堤監督という感じなのだが、けっこうなグロさ
を目の当たりにする光景が多く昔のパニック映画そのものという
感じを受けた。多くの豪華キャストが登場するが、話の軸は江口
と元木の対決になるので、え?それだけ?と思う短い出演時間の
俳優も多い。残された時間内で巨大ヘリをどう始末するかという
恐ろしい展開をよそにまるで他人事のように振舞う国家のド偉い
さんたちの描き方が巧すぎて腹が立った。結局どこに責任を押し
つけるかという、事故当時も確かにそうだったよなと思うばかり。
アツイ男を演じ切った江口も似合っていたが、哀しみを湛えた男
を一筋縄で理解させないよう演じたモっくんの演技は胸に堪える。
(救う価値があるのかと問われたらもちろんだと胸を張りたいよね)