「「問い」を残すサスペンス」ローマに消えた男 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
「問い」を残すサスペンス
双子の入れ替わりを主眼に据えたサスペンス。双子の弟・エンリケが最大野党の党首なのだが、党大会で野次られるほどの支持率の低さ。
党大会って言ったら集まってるのは皆支持者だろうに、そんな場で罵倒されるっていうのはどんな気持ちなんだろう?
生き延びるために妥協を重ねたユーロコミュニズムとエンリケが重なるようで、憐れみ深い。
自分の居所を完全に見失い、国際大会をブッチ切って失踪するエンリケ。そこで急遽代打に抜擢されたのが、双子の兄ジョバンニ。
それってアリなの?!精神病院から退院したてのヤバめのおっさん(ド素人)だよ?!
替え玉ジョバンニの一挙手一投足にハラハラしつつ、フランスで昔の恋人に厄介になりながら平穏な生活を送るエンリケにほっこりする。
シリアスなのにコメディのようにも感じるのは、この97分間に食事のシーンが7回もあるからなのか。さすがイタリアだな!
でも、ご飯を食べるシーンがあるから、登場人物を地肉の通った人間に感じられる。
とにかく、双子を1人2役で演じているトニ・セルヴィッロが素晴らしい。そっくり(同じ人なのだから当たり前だけど)なのに、兄弟の微妙な違いを観ているこちらにストレスなく感じさせてくれる。
そしてラストシーン。
このシーンの解釈を巡って、我が家では旦那の意見が採択されたのだが、誰かと一緒に観る人は、是非、自分の意見を述べるといいと思う。
原題は「自由万歳!」だが、「ローマに消えた男」の方が、味わい深い。
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