「人間性の抹殺の実話」イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密 だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
人間性の抹殺の実話
見逃すかと思いましたが間に合いました。
無料鑑賞券で観てきました。さすが黄金週間、混んでました。
カンバーバッチとキーラナイトレイ以外は知らない役者ばかりと思いきや、ジョン(ソ連のスパイだった人)に見覚えがありました。
家に帰って調べたら、ダウントンアビーの運転手のブランソン役だった人じゃないですかー。成る程見覚えがあるはずだ。
シンデレラにもデイジーがいましたし、ダウントンアビーの出演者が出世してますねー!
本編には関係ないですが、出演者のリンクを見つけると嬉しくなります。
閑話休題
暗号解読のサスペンスドラマかと思っており食指が動きませんでしたが、アランチューリングの苦悩のドラマでもあると聞きかじり、俄然興味が湧きました。
マイノリティーが無理解の中でどう生きたかに興味があるので、その点に注目してみていました。
1951年と第二次世界大戦中の1939年以降とアランの少年時代が混在する構成です。
アランはまぁ変人さんのようでした。カンバーバッチは変人さんの演技がお上手です。シャーロックとは別人の変人を演じています。人嫌いで協調性がなく、暗号解読チームの皆さんにまぁ嫌われます。そこは仕方がないとは思いますが。
少年時代のシーンで、変わり者であるがゆえにいじめられまくっている描写があります。床に閉じ込められるって…いつの世も酷いいじめはありますね。そこを助けてくれたクリストファーと仲良くなります。そしてアランはクリストファーに恋をします。でも結核だったクリストファーは休暇中にあっさり亡くなってしまいます。
時は流れてエニグマの暗号解読にマシンを使おうとアランは計画しますが、このマシンの名前がクリストファーなんですね。唯一恋した相手を、伝えられなかった気持ちをこめて名前をつけたんでしょうかね。
病的な趣も感じましたが、切なくも思いました。
暗号解読チームに疎まれますが、新しく募集した解読チーム候補者のジョーンという女性と出会い、この方が優秀でかつ、女性なので男社会に異物として存在するための社会性があり、アランと他のメンバーの軋轢を和らげる役割を果たしてくれます。聡明なジョーンをアランは好ましく思い、親に結婚を迫られるジョーンを観て、アランはプロポーズします。
結局結婚はしません。ジョーンはアランがゲイでも受け入れるつもりだったようですが、エニグマが解読でき、ジョンがスパイとわかり、中佐に解読できたことを黙ってなきゃならないからMI-6に後ろ盾になってもらってるので方針には逆らえず、ジョンにゲイだと気付かれてる、というサスペンスフルな状況の中で、多分ジョーンに危険が及ばないよう遠ざけたのでしょうが、切ない別れでした。
もし、なんていっても仕方がないですが、ゲイのままジョーンが描いていた結婚ができていれば自殺しなくて済んだのじゃないかなぁなんて、いってもしかたがないからいうべきでない思いが、抑え難く湧きました。
解読までのドラマ、解読から終戦までのドラマも見応えがありました。人間模様も見応えがあります。
ですがやはり私はわいせつ罪で有罪にされ、ホルモン投与で苦しまされたアランの孤独と心情に見所があると思います。
時代のせいだという部分もあるけれど、理解できない人を知ろうともせず断罪して自分を正当化する、というのは今でも起きている人間の醜さです。その醜さが自分の中にも確かにあることを認め、醜さを露呈して人の尊厳を奪わないよう自分を鍛え続けないとと、と思います。
それだけで解決するわけではないですが、自分にできることはそれだけではなかろうかと思います。
誰にでも思い通りに生きようとする権利があり、その気持ちを否定する権利は誰にもない。そう思います。