劇場公開日 2015年3月13日

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イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密 : 映画評論・批評

2015年3月10日更新

2015年3月13日よりTOHOシネマズみゆき座ほかにてロードショー

スリリングな暗号解読の裏側に浮かぶ、人間という最大の謎

つくづく得体の知れない映画だ。表向きは数学者がナチスの暗号「エニグマ」を解読しようと奮闘する英国ミステリー。しかし観客がその全貌を捉えたかと思うと本作は瞬時に身を翻し、伝記、サスペンス、社会派、人間ドラマと光が乱反射を繰り返すように色調を変えていく。

第2次大戦下、ケンブリッジ大学の研究者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)は誘いを受けて田舎町の政府施設を訪ねる。そこで託された極秘任務こそ戦争の行方を左右する暗号解読の仕事だった。本作は軍部やMI6などを巻き込みながら彼が史上最強と謡われた「エニグマ」に挑む過程をスリリングに描き出す。と同時に、大変な変わり者だったと言われるチューリングの人物像を、幼少期の記憶にも寄り添いつつ、パズルのように組み立てていくのも忘れない。

このチューリング、昔から「人と違う」ことに悩み続けてきた男でもあった。やがて観客は暗号解読が彼にとってどれほど重要な意味を持つ行為なのかを知るだろう。とりわけ後半、巨大な暗号解読マシンが答えを求めて延々と動き続ける様子は、まるで誰かと繋がりたいと必死に手を伸ばすチューリングそのもののように見えて思わず胸が張り裂けそうになる。

やがて信頼できる仲間や恋人にも恵まれ、研究は大きく前進し始める。そうした中で本作が「エニグマ」という巨大な壁のみならず、社会の価値観、差別、偏見という「越えるべき壁」をも果敢に映し出すのが印象的だ。自分の理解の及ばないものは排除しようとする空気は今なお根強く残るが、ひとつの糸口をこうして普遍的テーマへと昇華させていく手腕もまた、脚本(手掛けたグレアム・ムーアはアカデミー賞脚色賞を獲得)の秀逸さと言えよう。

そして、かくも複雑な色調を放つ本作を、カンバーバッチの真っ直ぐな存在感が見事に一本の柱として貫いた。巨大な謎に挑む究明者にして、自分自身もまた謎そのものであるという難しい役どころを、たった一個の身体で表現し得たその凄み。役者としての巧さ、演技の奥深さに震える一作である。

牛津厚信

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