「ここ数年じゃ最も怖いジャパニーズホラー」呪怨 終わりの始まり 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
ここ数年じゃ最も怖いジャパニーズホラー
はい、ええとですね、個人的に2014年度の
最恐ホラーほぼ決まりました。今作です。
いやまあ僕は幽霊ホラー大好きなクセに
すっげえビビりなんでね、「怖い」と言っても
あんまりアテにならんかもしれませんけどね。
映画を観た晩、風呂に入ったりトイレに行くのが
怖くなったのは久々です。目を開けたまま
髪を洗ってたらシャンプーが目にしみるしみる(笑)。
なんというか鑑賞後、こっちにまで被害が
及びそうな、忌まわしい雰囲気のあるホラー映画。
いいおうシリーズ全作鑑賞してるので、
今回は一般的なホラー映画としての評価と
シリーズリメイク作としての評価とに分けて書く。
* * *
一般的なホラー映画としてのレビュー。
まずは前述通り、怖い。
恐らくは『呪怨』劇場版第1作以来、少なくとも
『インシディアス』以来最も怖いホラーだと僕は思う。
のっけから最後まで恐怖描写の連打乱打で、
「えぇ……まだ続くんすか……勘弁してくださいよ……」
と観賞中に音(ね)を上げそうになった映画は久々。
鑑賞後の疲労感ハンパない(←褒めてます)。
2度鑑賞したが、恐怖シーンのタイミングが
分かっていても相当に怖くて疲れた。
ただ、恐怖描写からはジャパニーズホラー独特の
“粘(ねば)っこさ”がやや薄いと感じる。
恐怖シーンがてんこ盛りなのは良いけど、
ひとつひとつの恐怖シーンを
もう少し長く執拗に描いて欲しかったかな。
カット割りそのものがオリジナルより一般映画的
なのも、“粘っこさ”が減じた要因のひとつかも。
海外配給もされる映画ということもあってか、
日本と海外のちょうど中間くらいの恐怖感覚を
狙ったのかもしれない。
それでも、通常の海外ホラーよりははるかに粘着質。
児童虐待などのタイムリーなテーマを盛り込んだ事や、
問題の“家”の場所をありふれた場所に移した事で、
恐怖が身近なものに感じられる点も良い。
シリーズ恒例ではあるが、
最初のシーンとその他のシーンがどういう時系列で
繋がるのか、考えながら観られるのもパズル的で面白い。
冒頭のシーンがどこに繋がるか、分かると薄気味悪い。
表情に乏しいトリンドル玲奈を除けば役者陣も○だ。
佐々木希の大きな瞳はホラー映画にピシャリと
ハマっているし、新カヤコ役の最所美咲は
生前の姿もセリフもある幽霊という不利な役ながら
あそこまでの恐ろしさを出せる点につくづく感心。
日記ガリガリ+凝視シーンにはホントに背筋が凍った。
* * *
次に、シリーズリメイク作としてのレビュー。
本作はとにかく恐怖シーンが多い訳だが、
一歩間違えばギャグすれすれの、とんでもなく
直接的な幽霊の見せ方もしっかり継承されている。
だが最大の恐怖であるカヤコの妄執・怨念が
やや薄れて感じられる点は残念だ。
俊雄くんにフォーカスを当てすぎてカヤコ襲撃シーンが
少ない&襲撃描写にネチっこさが足りない為だろうか。
あるいは、
オリジナルのカヤコは家族放っぽらかしで
自分の情念を最優先させるキャラだったが、
今回は子供に異常に執着する母親になっている。
(こどもこどもこどもこどもこどもこどもこども)
それはそれでヒジョーに怖いが、母性が出た為に
その身勝手さやグロテスク性はやや薄れたかも。
過去シリーズを知る人間はカヤコのキャラに
ある程度の先入観がある訳だが、初見の方にとって
今回のカヤコがどこまで怖いと感じたか、気になる。
物語の展開はオリジナルほどに複雑ではない。
良く言えば分かり易いし、
悪く言えば考察の余地はあまり無い。
だが過去シリーズを知るからこそ驚かされる
シーンが多いことは新鮮でグッド。
カヤコさんとフツーに喋るシーンには驚いたし
(まあ全然フツーじゃないけど)、
クライマックスでの階段下りのシーンなんて「ふおお、
そこかいッ!」とビビりつつツッコんでしまった。
ということで、全体的な印象としては、
『呪怨』劇場版第1作とその海外リメイク版である
『THE JUON 呪怨』の中間、といったところかな。
* * *
以上!
評判の悪いレビューも目立つが、
近年のジャパニーズホラーの中じゃ
突出した恐怖度&出来の良さだと思います。
怖面白かった!
〈2014.06.27, 07.01鑑賞〉
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余談:
鑑賞マナーについて。
ホラー映画においてはほぼ毎回だが、
若い方々の鑑賞マナーがあまりよろしくない。
最初の鑑賞時、前列に座っていた6人くらいの
高校生が、開始直前までずうっと
ヒソヒソ話をしていて非常に気が散った。
勿論みんながみんなマナーが悪い訳ではないし、
今回の場合も映画に集中し出してからは静かだったので
まだ良識がある方だったんだろうと思う。
『貞子3D2』の時なんて上映中に喋るわスマホいじるわ
(スマ4D鑑賞ではない)で最悪レベルだった。
きっとお化け屋敷気分で映画を観に来るんだろうが、
静かに物語に集中したいお客さんだって多いのだから、
「自分達が楽しむ事」と「周囲の人達が楽しむ事」を
両立できるやり方で楽しんでいただきたい。
静けさもホラー演出の大事な要因なんだし。
マナー悪化を容認するようなキャンペーンを
配給側が行っているのも大いに問題で、
それをやるくらいならいっそ、
高校生限定のスクリーンとか
上映回とかに分けてもらえないかと思う。
観客のマナーや売る側の思惑で映画の評価自体が
下がるなんて、作り手が不憫だ。