「0.5光年の孤独」パッセンジャー odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
0.5光年の孤独
半光速で飛翔する宇宙移民船アヴァロン号は航路に浮遊する岩石群と衝突、冬眠装置のクロックチップの焼損で90年早く目覚めてしまった青年の孤独と葛藤をメインテーマにしたかったのでしょう。
確かに人はいざ自分の身に起きた時、どこまで冷静に利他的に振る舞えるかは難しい、その悩みのテンションで観客をひきつける狙いと見て取れます。したがって端から悩まない人には意味不明な映画でしょう。
スタートレック・シリーズの作家でもあるジェリー・ソウルの「Death in Transit」でも同様のシチュエーションが描かれているようです。脚本はジョン・スパイツですが前作の「プロメテウス」同様、万能診断治療マシンのAuto‐docが活躍していますね。
もし自分だったらと考えると、そもそもジェットコースターも苦手な臆病者なので地球滅亡のノアの方舟ならまだしも新天地への冒険など行く訳がないのだが、それにしてもこんな窮地に追い込む宇宙船の設計コンセプトに文句を付けたくなります。
重大アラートでレスキュー要員を自動覚醒する位出来そうなものですが誤動作で覚醒したデッキ責任者のガスですら応援を頼もうとしないのは腑に落ちません。全て自動修復可能なら別ですがスペアモジュールはあるものの手動交換として描かれるので尚更です。
宇宙船内を娯楽施設満載に作るのは豪華客船に習ったのでしょうが全員冬眠中に稼働させておく意味が分かりません、お酒や食糧も賞味期限はどうなのでしょう。
淋しさに負けてオーロラを覚醒させてしまうことで葛藤するジムを免罪するように迫りくる全滅の危機、二人の協力なしに核融合炉の暴走は止められなかった、Auto‐docを使えばオーロラを再冬眠できるなど一挙に黒を白にする筋立てにホッとするものの、弄ばれた感が拭えませんでした。
ただ、面倒なこだわりを別とすればCG、セット共、映像の素晴らしさは群を抜く力作でした。