ジョン・ウィック : 映画評論・批評
2015年10月13日更新
2015年10月16日よりTOHOシネマズ新宿ほかにてロードショー
アクションのキアヌが完全復活! 新たな伝説の幕開けに刮目せよ
キアヌ・リーブスと言えば、出世作のノンストップアクション「スピード」(94)と、SFアクションの金字塔的トリロジー「マトリックス」(99~03)。活劇の新潮流をも先導したこれら傑作群に恵まれたものの、近年はパッとしなかったキアヌが、ようやく本領を発揮できる作品に巡りあった。
今回の役どころは、引退したスゴ腕の殺し屋ジョン・ウィック。死別した妻から贈られた子犬との穏やかな暮らしで喪失感を癒す導入部は、私生活の「いい人」ぶりがよく知られるキアヌにぴったりだ。しかし、ロシアンマフィアのボスのバカ息子が、ジョンの愛車を奪うついでに愛犬も殺してしまったからさあ大変。元殺し屋は封印していた闘争本能を解き放ち、マフィア相手に壮絶な復讐を繰り広げていく。
製作陣には、「マトリックス」でキアヌのスタントダブルを務め、これが初監督作品となるチャド・スタエルスキほか、熟練のアクション職人が集結。銃撃と格闘技を組み合わせ、新銃術「ガンフー」を開発した。キアヌは長期の訓練と綿密なリハーサルでこれをマスターし、撮影に臨んだ。
こうして完成したアクション場面では、ジョンが流れるような動きで次々に敵を撃ち、接近戦で殴り倒すシークエンスを、少なめのカット割りでじっくりと提示。CGやワイヤーで誇張したり、目まぐるしいほどカットを割ってスピード感を盛ったりする派手なアクション大作とは一線を画す演出で、練り上げられた型の美しさとリアルな身体の躍動で魅せる“新時代の本格アクション”の趣さえ漂う。
特筆すべきもう1つの見どころは、雰囲気たっぷりに描写される裏稼業のコミュニティー。殺し屋たちが集う中立地帯のホテルがあり、電話一本で駆けつけて死体を片付ける「掃除屋」たちがいて、仕事の報酬は専用の金貨で支払われる。プロ同士の信頼関係がクールに表現され、ニューヨークの夜の街並みとともにダークな世界観の構築に大いに貢献した。
全米1位の大ヒットを受け、すでに続編の製作も決定。キアヌの新たな代表作となる「ジョン・ウィック」シリーズの幕開けに立ち会えることを喜びたい。
(高森郁哉)
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