紙の月のレビュー・感想・評価
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施しの快楽と富める者としての後ろめたさからの解放カタルシス
全ての支配をひとつずつ振り切って自由になっていく主人公を追って自分も解放される素晴らしい映画体験でした。
金を稼ぎだすことで旦那からまず自由になった主人公は、他人の欲望ではなく自分の欲望を開放し、富めるものから貧なるものに金を施す善行を見咎められたのち、横領と謗られ逃げ出すことで、規範の世界と真面目な勤労者たちの社会から自由になっていく。銀行のガラスぶちやぶって、まっとうな人たちを取り残して走り去るシーンは一番爽快で「一緒に行きますか」に私の中の良心めいたものや規範意識は殺されてしまい、拍手さえできるほどの羨ましさしか残らなかったです。それでも最後まで彼女が囚われていた、施した対価としての感謝の気持ちによって他人とゆるぎない関係性を得たいという欲望と、富める家に生まれた自分自身の後ろめたさからどうやって自由になるのかなと思っていたら、異国の地で、かつて幼い頃の自分が親の金で施したような貧民に、果物を恵んでもらうことで施しの快楽、貧富の後ろめたさの輪廻からも自由になり、最後のカタルシスも見事なフリーダムハッピーエンドでした。
したたか、浅はか
今幸せですか?
夫と暮らし銀行に勤める梅澤梨花。
顧客をまわって出入金している。
その先で知り合った顧客の孫の平林こうたと
再会したことから、不倫関係になり、
顧客の預金を書類偽造して引き出し、
新しい服を買ったり平林と豪華な旅行に行ったり
平林に高級品を買い与えたりと、
散財していく。
一人の高齢女性から200万円出した描写はあるが、
他あまり具体的に描かれておらず
平林と宿泊したホテルの支払いが145万円、
と聞いていくら使い込んでいるんだ、と驚いた。
リストラされそうなベテラン女子行員が、
自分の存在を知らしめようと書類をチェックし始めると、おかしな点が‥‥。
梅澤梨花に疑惑浮上。
本人ははぐらかす。
コッソリ顧客宅に行き、梅澤のことを探る。
抜き差しならぬところまで来て
課長と問い詰めるが。
梅澤梨花の不正はちょっとの出来心ではない。
自宅にコピー機まで入れてカラーコピーを駆使して
出金伝票やら偽造。
あの姿を見ていると、なかなかの入れ込みよう。
こういう人だったんだ。
夫は海外単身赴任、好きにできる状況。
平林は、すでに梅澤に飽き同年代と付き合う。
梅澤は何がしたかったんだ?
こわっ
三和銀行オンライン事件
マニラで逮捕された伊藤素子をモチーフになっているのだと思うけど、あの三和銀行の事件も、美人の行員の詐取であり恋人のためであったが共に逃亡する予定だったその男は妻子と豪遊生活をしていた。同情のほうが勝った報道だったと子供心に覚えてます。
この映画は以前に視聴済みですが、原作は読んでいないから何とも言えませんが、少々プライドが高い程度の攻撃的でもない真面目な優しい夫への当てつけにしては、やり過ぎ?というか、本気であの大学生を好きになったんだろうけどね。契約社員になれて顧客から契約もとれて、そこであの大学生が現れたくらいで、今の自分の居場所の銀行を欺く?と少々腑に落ちないけど。とはいえ、伊藤素子もそうなんだろうけどね。
作品の中だけど自由にやってくれて爽快!
日本の秩序やルールの範囲の中では満足出来ない氣持ちが爆発!!わかる!!
抑えられれば抑えられるほど、縮められたバネのように、きっかけがあればビョヨヨ〜ンっと大きな力で飛び出した!!いいぞ!
おカネもキリスト教も支援の寄付も人工的な作り物なんだし、よし、君は自由に好きなことして生きてくれ!!
…私はそういう目線で今作を視聴しました。
宮沢りえさんが演じる主人公は犯罪者ですが、これは映画なので、ルパン三世のように逃げればいいと思います!
ついつい道徳の授業みたいなことを考えそうになったけど、月が消えたんですから、いいんです。
…自由って
梨花は(宮沢りえ)
優しいご主人と普通に結婚し
普通に生きてきた
なのに…銀行のお金を横領してしまう
年下の男のためそして自由を得るために
その時手元にお金があったことも
…要因の一つなのかも
彼女の根幹は中学生の時
父の財布からお金を抜き取った経緯がある
多額のお金を寄付する事がなぜ悪いのかと
ここのシーンもその言葉に驚きがあった
親のお金を盗んだことを
悪いと思ってないことに驚いた
梨花の不正を暴いた
隅(小林聡美)と対峙するシーン
…梨花は
隅に指摘されても一歩も引かない
自分の思いを言い通す
そんな理屈は通らないのにと思った
凄く緊迫したシーン
人を騙したお金で暮らした日々は
しあわせだったのだろうか
逃げて…自由になれたの
と問いかけたい
個人的に記憶に残った作品
2014年に一度見ましたが、昨日再度鑑賞。
宮沢りえさんのまじめで素朴なんだけどどこか心の奥に闇を抱えている女性の演技がとても印象深かったです。
主人公の梨花は、誰かに施すことが「自分の幸せ」と話していますが、それをしている自分に酔い、また誰かに施すことで自分を見てほしいという強い承認欲求があるように感じました。物語の中だけのように見えますが、一線を越えないだけでこういった女性は結構多いと思います。
複数の実話を掛け合わせて作られた作品であると聞いていましたが、一定数の女性の中に潜むこういった感情がその事件の共通項だったのではないでしょうか。
劇中では、世渡りを上手く行う大島優子さん演じる相川さんの姿を見て、うまく立ち回れないのに感化されていく梨花の姿がとてもリアルで「ああ、ダメだよ。あなたはダメだよ。」と止めたくなるほどでした。
ジワジワ暴かれていく緊迫感は楽しめますが、わかりやすい最後や描写を求めている人にとってはわかりづらい内容かもしれません。
原作をまだ読めていないので、急ぎ購入して読みたいと思います。
原作も是非!
原作未読
音楽の違和感
飛び降り場面の矛盾
ネタバレ
ガラスを割った場面では飛び降り自殺か!?と思ったけれど、なんと飛び降りての逃亡にはありえないと頭を振る。
見た感じ2階のようだがそこからコンクリート床にハイヒールのまま無事飛び降りることなどほぼ不可能。(その無理さが分かっていたからか飛び降り場面はカットしている)
なぜなら子供の頃深い雪の上に2階から飛び降りたことがあり、ショックを雪で吸収されたとはいえ膝にあごをしこたまぶつけしばらく悶絶していたから。
それに、横領発覚しての逃亡となれば即警察に通報するだろうし、全金融関係に連絡で預金凍結。それにクレカ使用停止とあっては金銭的に万事休すのはず。
とても海外逃亡して生き抜く資金も生活力もあるとは思えないので、詰めの最後でファンタジーとなってしまったのはどうにも悔やまれる。
2007-4
映像表現と鑑賞スキル
派遣社員として銀行で働く平凡な主婦・宮沢りえが、ふとしたきっかけで不倫と横領を始め、深みに嵌り破滅していく物語。ありふれた題材だが、場面に応じて映像表現と言語表現を巧みに使い分ける手法は斬新である。
主人公が不倫を決意する場面は映像表現である。主人公は客の孫である若い男と駅で再会する。隣り合ったホームで見つめ合う二人。主人公側のホームに電車が止まり走り去っていく。次の瞬間、若い男のいるホームの階段を下りてくる主人公の脚が映し出される。その足取りは悲壮ではなく期待感が垣間見える。階段を下りることは、不倫という修羅の世界に堕ちていくことを暗示している。台詞無しの、表情、仕草だけで主人公の揺れ動く心理を表現する宮沢りえの演技力が秀逸である。
ラスト近くの、横領が発覚した主人公の職場からの逃走場面も映像表現。主人公は窓ガラスを割って屋外に脱出する。ガラスは既存社会の壁の象徴。ガラスを割ることは、既存社会のしがらみ、固定観念から主人公が解放されることを意味する。疾走時の主人公の爽やかな表情に自己解放の歓びが凝縮されている。
一方、銀行の権化のように厳格な先輩行員・小林聡美、若さと美貌の中に小悪魔が潜む同僚行員・大島優子と主人公との会話は、洗練された本音の台詞のぶつかり合いであり、三人の女性の生々しさに魅せられる。言語表現の妙である。
よく判らない、期待外れ。私が本作を推薦した人達からの感想である。再鑑賞してその理由を考えてみた。敢えて言語表現に頼って鑑賞してみると、本作は説明不足で意味不明な作品に成り下ってしまう。映像表現の理解度、即ち鑑賞スキルが作品の評価を左右している。それでは、観る側の誤解がないように、全編、懇切丁寧に言語表現を盛り込んだ作品が最良かというとそうではない。
映像表現は映画の醍醐味である。作り手に要求するばかりではなく、我々観る側も努力する必要がある。鑑賞スキルを磨いて映像表現に挑んでいきたい。
幸せになるほどどん底に突き進んでいく。見ていて心臓をキュッとされる...
宮沢りえの凄さを観る映画
どこかで共感、どこかで正義感
やってはいけないと分かりつつも、やってしまう人間の弱さと快楽に溺れる人間の欲望を見事に映画化。
吹っ切れる所の表情や、猟奇的なとこはさすが主演!!
不倫してしまうお相手の大学生も無気力であり、まー非現実的な夢ばかり語るところは、どこか過去の自分と環境は違うが投影してしまう。
悪い事をすると捕まるのは当たり前だが、掻い潜って回外に逃亡してしまうあたり今ではできない ところなのかもしれない。
紙幣の紙と、夜明けの月をかけて、消えるモノと対象的な描写はどこか幻想的。
本見て映画か、映画見て本はどちらも良き作品かなと!
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