「タイトルなし(ネタバレ)」複製された男 supersilentさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
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自分と同じ人間が存在する。その謎にどんな答えが待っているのかわからないまま物語は進行する。SF的なクローンの話なのか、自らが作り出した二重人格的な話なのか、二重人格であるならばどれが本体でどれが偽物なのか。はたまたどれもが本物、もしくはどれもが偽物なのか。最後まで明かされることはない。
唐突に現れる蜘蛛があまりにもSF的な奇怪さを放ち、その奇抜さゆえに蜘蛛は心理状態の異常性を表していることがわかる仕組みだが、女の束縛のメタファーになっているとのサイコロジカルな解釈は興味深いものがある。
最後のシーンの奇怪さはホラーとさえ言えるほどのインパクトを放ち、それまで見ていた全てが妄想なのではないかとさえ感じさせる悪い夢を見ていたかのような映画。カフカ的と言えば聞こえはいいが、そのカフカの世界は外側から眺めて初めて鑑賞できる冷静さを保てるのかもしれない。
誤まってその世界の内部に迷い込んでしまった時の恐怖を言葉にすることには何の意味もないだろう。言葉とは理解する相手がいて初めて成立する記号であって、相手のいない宇宙に宙吊りになる時に実感するのは、圧倒的な混乱と、自分が混乱していることをどこかで冷静に自覚している自分への絶望だけだからだ。おいそれとおすすめできる映画ではないけど鮮烈な印象を与えてくれるのは事実。
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