「定番と、定番の省略と、キャラクター。」コードネーム U.N.C.L.E. すっかんさんの映画レビュー(感想・評価)
定番と、定番の省略と、キャラクター。
◯作品全体
プレイボーイのアメリカ人、堅物なロシア人、相手はナチ残党…記号化された要素が多いうえ、敵同士の共闘という主軸や紅一点の裏切りによる拷問みたいな、「ザ・スパイ映画」の展開に正直意外性はまったくない。ガイ・リッチー作品特有の「言葉や行動の意味を時間をずらして映す」種明かしの演出が意外性は面白かったけれど、大体のシーンに強行突破のオチがあって、策略っぽくないのが気になった。
それでも面白く見れたのはカメラワークとカット割りの工夫なんだと思う。
冒頭のカーチェイスも単純に二台を追うんじゃなくてそれぞれの視点で相手を見るカメラがあったり、フォローパンするところでもフォローパンのなかでQTUがある。アクションを見せるところ、それぞれの表情を見せて緊迫感に寄るところ、それぞれが両立している用に感じた。
研究施設に潜入するシーンやラストで英海軍と強襲するシーンでは画面分割で情報量を増やしていたのが面白かった。潜入とか銃撃戦なんてのは、それこそ「スパイ映画」の定番なんだろうけど、動きを見せてもそれこそありきたりになってしまう。最終的にそれぞれの主人公が同じフレームに収まる演出によって画面分割の演出が突出しすぎないようにしているところも含めて、巧さを感じた。
じゃあスパイ映画の定番であり魅力を削いだ分どこに時間を使うのかと思っていたけど、それはメイン三人の関係性だった。特にギャビーに関しては「整備士の娘」を偽装する「英国スパイ」を印象づけるためにイリヤとのシーンは長めに時間をとっていて、微妙な距離感がすごく面白かった。
アメリカ人のナポレオンが物語の中心にいたのは予想の範疇だったけど、キャラクターを掘り下げる時間はイリヤの方が多かったのがまた良かった。完璧なスパイであるがゆえにあまり語らない(語れない?)のは少し残念ではあったけど面白い構成だった。
物語で魅せられるガイ・リッチーだけど、本作はキャラクターで魅せる。そんな作品だった。
◯カメラワークとか
・やっぱり画面分割の使い方が面白かった。OPの延長線上な気がするけど、「シームレス」「情報量の多さ」。
◯その他
・ナポレオン役のヘンリー・カヴィルがかっこいい。
・序盤の東西ドイツの美術が良かったからもう少し見たかったなと思った。戦後の混乱を感じるような汚くて、灰色がかったベルリンの感じ。