劇場公開日 2025年6月13日

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「監督のアイルランド魂を感じて号泣」はじまりのうた minavoさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 監督のアイルランド魂を感じて号泣

2025年10月1日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

最近、リバイバル上映が増えて、当時話題になってたけど何となく見逃してた映画を、まっさらな気持ちでみる楽しみに目覚めてます。

本作もニューヨークの音楽プロデューサーと女性シンガーソングライターの話くらいの予備知識で観に行きました。

カーニー監督すみませんでしたー!

最高でした。声あげて泣かされました。

音楽わかってる監督が音楽映画撮るとこうなるんや、という凄さ。だって嘘の音がないんだもの。最近の邦画の音楽扱ったあの映画なんて、歌声からして嘘の音ばっかじゃないですか。

で、この映画のすごいところは、音楽で感動させようとかこれっぽっちも考えてないところ。ストーリーラインにあった曲(歌詞)、クソ曲など、パーツのように準備して、映画の装置として完璧に機能してる。

デモテープもわざわざこういう音楽は捨てられて当然ということを描くために、わざわざ用意したように、キーラの歌う曲、彼氏のクソ曲など、オリジナルソングを絶妙なバランスで、わざと低いクオリティにしてる。アメリカで受けるためには曲はどうあれ踊れればそれでいいという現実を突きつける。

彼氏がアジア系の彼女と浮気する前から、キーラに抹茶をおしっこの味言わせ、サムライいじりにつなげる伏線から、浮気先から帰ったときに聞かせるクソ曲にも、歌詞に東方がどうのこうのしっかり入れてましたしね。アジアはイギリスから見たら東方ですからね。(監督、日本も嫌いなんだな。日英同盟、破棄したことまだ怒ってるんかな?)

娘のギターもヘタな設定の中で少ない音数でもハマるギリギリのラインを絶妙に弾いてるプロの仕事でしょ?そういう監督のいい意味のあざとさ含めて感動した。

だから、カーニー監督がキーラのことモデルあがりのクズ呼ばわりして映画に感動してるファンがドン引きしたこと、監督の気持ちわかります。確かに口パク見え見えだし、ギター映せないし大変だったでしょう。でも、ええやないですか。あのブルースブラザース のアレサも口パクなんだし、いろんな意味で気にすることないですよ!

監督がダブリン舞台に作った映画がサンダンスで評価されて、ハリウッドからニューヨーク舞台にオシャレな音楽映画のオファー。しかも、監督が大嫌いなアメリカ音楽で!(キャロル・キングていう時に間に放送禁止ワード挟むの聞き逃しませんでした)さらに、監督の真意を全く理解しないキーラを押し付けられたこと、こいつモデルあがりかしらんけど、ギター全然練習しないやんけと。そして出来上がった作品を素敵な音楽を楽しむ映画だと勘違いして、キーラ最高とか言ってる観客に苛立つ気持ち。

表向きは、音楽の力で人生をリスタートさせるのが主題としといて、根底には拝金主義の黒人オーナーやとりまき、自分のラップをメモさせるアホな黒人ラッパーの描写とかも意識的に入れて、ブラックミュージックに寄りすぎてつまらなくなったアメリカ音楽の現状に対して、アイルランドパワー見せてやんよ、ということを描いてますよね?ですよね?

キーラのバンド編成にバイオリン(ケルト音楽ならフィドルが定番楽器、鉄弦のバイオリン)やビオラ入れたりもそうですし、ケルト文学の話を突っ込んだりと、監督のイングランド魂?アイルランド魂?ダブリン魂?どれか知らんけど、伝わりました。ビートルズへのオマージュもだし(黒人にあのベース持たせてるだけで笑える)、最後の曲なんてイントロのコード、Fmaj7から歌詞まで、ボウイのSpace Oddity丸出しだし!大英帝国の音楽ネタ総出で、猛アピール。(そこはあんま響いてないけど。)

たしかアイルランドのミュージシャンでアメリカでも成功したの、エンヤとかU2くらいでしたっけ? 監督、ごめん。そっち系あんまり興味なくて。

マークラファロ演じるプロデューサーの愛車がジャガー(イギリスの高級車)やて。どんだけイギリス好きなんだ。ジャガーからクソみたいなアメリカ音楽をなげすてるとこが、監督のやりたかったことなんですね。

でも、監督はアメリカ音楽を全否定するわけじゃなく、冒頭のバーのシーンでさりげなくブルースを流したり、お気に入りリストのくだりで、アメリカのいい時の音楽入れてくるあたりフォローが周到すぎて、実はそういうところが一番泣きました。監督のセンスが怖すぎて。

音楽に対するメッセージ以外だと、マークラファロがキーラに誰のために曲つくってんのか?みたいに問い詰めるとこ。ネコの話をいじるのは、ハリウッドのシナリオテクニック「SAVE THE CAT(主人公の共感をさそうには、ネコを助けてる姿を見せとけ、という観客をなめてるシナリオセオリー本)」をおちょくってるなと。監督、ことごとくアメリカにケンカ売ってますねー。

まあ、このあとの監督のキャリアみたら、もうアメリカで仕事すんのはこりごりって感じなのかなーなんて。

話はとんで「罪人たち」ですが、こちらジュークジョイントを襲うバンパイヤはアイルランド移民だそうじゃないですか。アメリカ音楽のルーツは、ブルースだけじゃない。アイルランド移民も綿花畑で黒人と一緒に働いてて、音楽的にも影響されてたんや。そのメタファーとのこと。

アイルランド魂をお持ちのカーニー監督としては、今どんなお気持ちなんでしょうか。

minavo
minavoさんのコメント
2025年10月2日

sow_miyaさん

コメントありがとうございます😊
監督のメッセージが伝わりすぎた感動で泣きすぎました。

minavo
sow_miyaさんのコメント
2025年10月2日

フォローありがとうございました。
なるほどのレビューで、もう一度見返したくなりました。
今後ともよろしくお願いします。

sow_miya
minavoさんのコメント
2025年10月1日

ゆーきちさん

コメントありがとうございます😊
シングスストリートだけ見てないので、映画館で観る機会を待っております!

minavo
ゆーきちさんのコメント
2025年10月1日

フォロー、ありがとうございました。

カーニー監督、私も大好きです。多分、「シングストリート」もアイルランドを感じるエモい作品なので、めちゃくちゃおすすめします♪

ゆーきち
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