「この映画を観てスプリッタを買った」はじまりのうた ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
この映画を観てスプリッタを買った
イヤホンのスプリッタの、小道具としての使い方が好きだ。スプリッタは「分岐」させるためのものだが、一つの端末を2人で「共有」するために使うもの。スプリッタで音楽のプレイリストを共有する2人は、愛はあるけれどいつかは別れる。スプリッタが別れと想いの共有という相反する2つのメタファーに同時になっている。
ジョン・カーニーの映画は、いつもシンプルなのが良い。音楽を巡る政治的言説などは出てこないし、経済的な問題もあまり語られない。彼の映画で描かれるのは常に純粋な音楽への想いだ。音楽への原初的な衝動を常に大事にしている。今作ではそれを中年男性が体現するのが良い。いくつになってもそういう初期衝動のようなものを忘れないでいられたら、失敗してもやり直す力が湧いてくるのだろう。青臭いと思う人もいるだろうけど、青臭いから良いものもある。むしろ青臭いものをてらいなく語れることを羨ましいと思う。
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momokichiさんのコメント
2022年10月27日
>スプリッタが別れと想いの共有という相反する2つのメタファーに同時になっている。
なるほどなあ。(そういえばダンともデイヴともスプリッタで曲を聴いてましたね。)
>純粋な音楽への想いだ。音楽への原初的な衝動を
まさに大共感! この青臭さがたまらなく良かったです!