ナイト ミュージアム エジプト王の秘密 : 映画評論・批評
2015年3月17日更新
2015年3月20日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
楽しいくだらなさとせつなさの波状攻撃がたまらない最終章
夜の博物館で展示物たちに命が宿る。このワクワクさせる「トイ・ストーリー」博物館版ともいうべき設定を、少年ではなくそのダメ父を主人公に映画化した人気シリーズも第3弾。三部作と銘打っているわけではないが、作り手も当然、最後のつもりでいるのがわかる。“時の流れ”、“別れ”といったテーマが見え隠れするからだ。そして明確にわかるのが、作り手やキャストの面々が、いかにこのシリーズを愛しているかということだ。
ニューヨーク自然史博物館の夜警でスタッフでもあるラリーと愉快な展示物の仲間たちは、彼らに生命を吹き込んでいる魔法の石板に異変が起きていることに気づく。その謎を解き明かすため、一同はアクメンラーの父王が眠っている大英博物館へ(ここでかかるのがクラッシュの「ロンドン・コーリング」!)。新キャラやギャグが次々に繰り出され、子どもも大人も大いに笑える。とくに、ランスロットが迷い込む劇場での、あの人のカメオ出演は映画史に残る名シーン! 前2作と違うのは、チャーミングなくだらなさの合間にふと、猛烈なさびしさが漂うというところ。
ラリーは息子のニッキーが大学へ進学したくないと言うのをなんとか思い直させようとして衝突している。やきもきする親の心も知らず、成長していく息子。親は子離れをせざるを得ない。この親子のほかにも、アクメンラーと父のファラオ、ラリーとサルのデクスター、ラリーと彼をパパと慕うネアンデルタール人のラー(ベン・スティラーの2役!)、そして、ラリーをいつも温かく見守ってきたテディ・ルーズベルトという“父と息子”の関係が浮かび上がる。見捨てられた子どものような騎士ランスロットの存在も、けっこうせつなくなってくる。
そしてテディを演じるロビン・ウィリアムズ(と元夜警3人組のミッキー・ルーニー)がもういないのだという事実が、映画に魔法をかけてしまった。さよなら、そしてありがとう、テディのロビン。眼鏡の奥の温かい眼差しをラリーに向けて、彼は言う。「You done your job(親の役目は終わった)」と。エンドクレジットを追いながら、あまり湿っぽくなりすぎないようなラストシーンを用意した監督に向かって、ロビンがこう言っているような気がして涙が止まらなくなってしまった。
(若林ゆり)