マンデラ 自由への長い道のレビュー・感想・評価
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闘いを止めなかった男
言論の闘争により自由を求め、非暴力を訴え、南アフリカの平和実現のために命を懸けて戦ったネルソン・マンデラの物語。1994年4月、マンデラが南アフリカ共和国大統領に就任した時点で映画は終了する。
印象深かったのは、大統領選挙前にマンデラが全国民向けに出した声明で、”白人を赦す”と発言したこと。白人に対する憎悪が極限に達していた黒人達には到底受け入れがたい内容だったが、マンデラがいかに非暴力で国を団結したかったかがわかる。
どこの国ででも、大統領は板挟みの状態。国民の意見に耳を傾けるのが政治家の仕事でもあるが、時には国や地域をよりよくするために何をすべきか、ということを自らの判断で決断することも必要だろう。それにはもちろん正しい信念を要する。
現在の日本はどうだろうか。テレビや新聞を見ると、安全保障法案に反対する声が多いように感じる。それにも関わらず、安部政権は”強行採決”した。
安部首相は信念に基づいてこの決断をしたのだろうか。日本は平和の道を歩むことはできるのだろうか。
国家のリーダーの決断についても考えさせられる映画だった。
95年の人生を懸けて。
ネルソン・マンデラ氏の自伝を基に描いているだけあって、
おそらく彼の実像に最も近いのだろう。
今作では彼を聖人だとは描いておらず、反アパルトヘイトを
掲げるアフリカ民族会議(ANC)に身を投じた彼が、
政治活動に傾倒していく様子が冒頭から色濃く描かれていく。
非暴力主義を貫くことの限界、過激な武装闘争に身を投じて
テロ活動を行うしかなくなった彼らの選択には胸が痛くなる。
なぜ、どうして、ここまで黒人が差別され卑下されるのか。
どんな疑問を抱こうとも、法すら解決してくれない時代。
彼が生きた時代の恐ろしさとおぞましさ。
自身の活動によって家族との縁が薄くなり、結婚しても
結局破綻する。冒頭とラストで彼が回想する幼い頃の家族、
皆が笑い合い、一緒に食卓を囲む風景が遠くに霞んで見える。
どれほど長い闘争が続き、どれほどの自由が奪われ続けたか、
人々はその環境で得た苦しみを、何か憎むことでしか復讐を
成し得ないものだろうか。2番目の妻ウィニーとマンデラが
相反する決意を浮かべたあたりから、難しさが充満してくる。
ずっと闘ってきた人間と、これからを考える立場にいる人間。
目には目を。歯には歯を。そうしなければいつか殺される。
それが唯一の生きる糧だった妻にマンデラが告げたこととは。
アンタはのんびりトマト栽培かよ。それでいいのか?と訴える
若者に対し、後に釈放されたマンデラが実現させたこととは。
少し前に観た映画で(今作と比べるのもどうかとは思うけど)
母親と息子の人生を引き裂いたシスターに対して、その母親が
下した判断を思い出す。罵声を浴びせても、法に訴えてもいい
その立場で、母親がシスターに下したのは全ての赦しだった。
憎しみを終わらせることは難しい、恨んでも殺しても癒えない
その苦しみをどうしたら受容や赦しの心に転化できるんだろう。
彼の演説をじっと部屋で聞いているウィニーの姿が映った時、
いままでの彼の云わんとすることが通じてくれれば、と思った。
無条件で相手を受け容れることから理解は育まれていくのだと
人間マンデラは95年の人生を懸けて、私達に教えてくれている。
(ボノが書き下ろした「オーディナリー・ラヴ」が、また素晴らしい)
生きた人間マンデラ
アパルトヘイトのひどい状態を描く、よりもマンデラの人間性を描いた映画です。
はた目にもひどい、ということも人として生きていく中ではある・・・。変に隠したりごまかしたりせず、率直に語る人だからネルソン・マンデラらしいのかもしれない。そんな人だから信頼され愛されたのかな?とも思います。
とはいえ、ANCないのゴタゴタ、妻との不和等が映画としてきちんとまとまっているか、というとあまりに駆け足すぎるよう。
大統領就任で映画は終わるのですが、実際はまだまだ彼の人生はここから・・・。
観ていて消化不良を感じてしまいます。
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