劇場公開日 2015年3月7日

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「ミステリーの定石通りに唐突に始まるものの、そこから丁寧に描かれていて見応えある力作」ソロモンの偽証 前篇・事件 アンディ・ロビンソンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ミステリーの定石通りに唐突に始まるものの、そこから丁寧に描かれていて見応えある力作

2024年8月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

取り敢えず、近年の作品にありがちの様に、作品タイトルが謎解きと関係のあるワードとかには直接の関係は無い、象徴的な意味あいになっているところは、「何のことだろう?」とか意識しながら観ていると、肩透かし感あります。

前編であるという事を理解した上で、“事件”部分と登場人物たちの紹介〜その背景描写に2時間の長尺を、如何に中弛みや無駄なく使ってのことなのかに興味を持ちながら鑑賞しました。

元々が法廷劇に繋がるミステリーの原作長編小説がベースになっている事で、単純に考えても前後編くらいは仕方ない事だろうとは思えます。
また、ただのミステリーものであるのなら、ここまでの描写は必要ないところであるものの、その後の法廷劇部分を盛り上げるには、個々の人物についてのある程度以上の丁寧な描き方が求められるという事も。

しかし、鑑賞していて感じたのは、ただ客観的に登場人物たちの背景などを深掘りしているだけの印象では無く、“子供達”の精神面、特に思春期特有の不安定な情緒面と、それを取り巻く、或いは結果的にそれをもたらす元凶ともいえる周囲の“大人達”との関係性に踏み込んでというか、重きが置かれていると感じた事でしょう。

後編の法廷劇へのただの布石だけにと考えるのであれば、ここまでやる事は求められないと思いました。
前編である本作の終わりのシーンからも分かるように、主人公の中の何かが変った瞬間、内なる決意をもって、“優等生”らしく振る舞って周囲からもそう思われていた、ただの“良い子”でしか無かった自分への決別を感じさせるものとなっていたように感じました。

この事により、犯人探し的なミステリーの本筋(?)部分よりも、中学生たちが自分たちなりに如何に事件の真相に迫り、もはや後戻り出来ない状況の中で、その“真実”と向き合うことになるのか?

2時間のドラマは、そうした心境と興味を掻き立てるのには十分、目的の達成に成功している構成であるように感じられ、久々に見応えある邦画を観たという感触を得ました。

出演陣については、その多くがその後NHK朝ドラ系などでもお馴染みになっている方々も多く、主人公として絞られた子供達以外は、敢えて突出させるような扱いを控えて出番配分が成されている中で、それぞれ重要な役回りを演じられている事、もはや何ら申し上げる事も有りませんでした。

アンディ・ロビンソン