ソロモンの偽証 前篇・事件 : 映画評論・批評
2015年3月3日更新
2015年3月7日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー
作り手と選ばれし少年少女たちの覚悟が生んだ学園サスペンスの見応え
さまざまな「覚悟」が積み重なり、融合し、化学反応を起こした結果、見応えのある重層的な群像ミステリーが誕生した。2000ページを優に超える宮部みゆきの傑作小説を、二部作とはいえ映画化を実現させた製作陣の覚悟。中心となる中学生の配役をすべてオーディションで選び、長期にわたるリハーサルで鍛え上げた成島出監督の覚悟。そして、選りすぐりの少年少女たちの覚悟を持った芝居に引き込まれていった。
クリスマスイブの夜に校舎の屋上から転落死した中学2年の男子生徒。状況から自殺と判断されるが、殺人だとする匿名の告発状が学校などに届く。同じ学年の生徒が容疑者とされ、容赦ないマスコミ報道や煮え切らない学校側の態度に業を煮やしたクラス委員の藤野涼子は、学校内裁判を開き真実を突き止めようとする。
藤野自身が遺体の第一発見者となり、送られて来た告発状を読むという、原作にはない要素を盛り込んだことでドラマ性が際立ち、彼女が物語の軸であることを明確に提示したストーリーテリングが秀逸。その藤野は、役名をそのまま芸名にしてデビューするという覚悟も相当なものと推察でき、実に堂々と同級生たちをけん引する。多感な中学生らしさも持ち合わせ、久々に大型新人の雰囲気が漂う。
ほかの同級生や親、教師らがそれぞれの覚悟を持って裁判に向き合おうとするところでひとつの帰結を迎えるが、二部作にありがちな“壮大な前振り”のような過ちは犯していない。カタルシスを心に内包したまま、「後篇・裁判」の“判決”を覚悟して待ちたい。
(鈴木元)