「焼き直しはいらない」THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦 カルストさんの映画レビュー(感想・評価)
焼き直しはいらない
この作品は、アニメ劇場版第2作、パトレイバー2の焼き直しである。
作品紹介では、パトレイバー2の後日譚ということになっているが、ストーリー的には焼き直しといった方が正しいだろう。
映画を観ていると、観たことのあるシーンが続く。例えば、レインボーブリッジを爆破したのがミサイルであることを民間企業がたまたま撮影したビデオで確認するシーンや、後藤田と高畑が日本橋川付近を船で移動しながら会話するシーン、警視庁の会議室で後藤田が詰問されるシーンなどは、パトレイバー2の有名なシーンの焼き直しだ。特に警視庁のシーンなど、詰問される後藤田を上から魚眼レンズのようなもので撮影するところまで似せている。もちろん、監督が意図して撮ったものであるはずだが、これにどのような意図があったのか全く分からない。何の新鮮味もない上、パトレイバー2を観た人間には懐かしさよりもがっかり感の方が強いのではないか。
例によって、小難しい言葉を並べた押井節を演者が蕩々と述べるが、これは近年の押井作品では避けて通れないのだろう。だが、これを省いてテロリスト達に主張させるとか、灰原の正体についてもう少し描写したりした方が作品としては面白かったと思う。テロリスト役に吉田鋼太郎などいい役者を使っているのに、使い方がもったいない。
もう一つ、泉野明が灰原を毛嫌いしている理由が映画を観た限りではよく分からない。おそらく、警察車両などを銃撃した際に死傷者を出したからだと思うが、死傷者が出たということをはっきり示すシーンがないため、明が持っている反感に説得力がない。押井監督は血が嫌いらしいのだが、流血シーンを作らなくても良いから言葉ではっきり死傷者が出たと分からせれば良かったのではないか。
良い点もある。CGはさすがに金をかけている感じ。太田莉奈や森カンナのアクションも良かった。太田莉奈についてはエピソード4でなかなか見応えのあるアクションをしていたが、今作のアクションもいい。森カンナは本人がアクションまでやっているのかどうか分からなかったが、ニヒルな感じが出ていて良かったと思う。
灰原が生きていたのであわよくば次回作を狙っているのかもしれないが、もし次作を作るのであれば焼き直しだけはやめて欲しい。