「「この映画は大事なものを盗んでいきませんでした」」ルパン三世 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
「この映画は大事なものを盗んでいきませんでした」
僕が劇場で映画を観る基準は、“これは絶対劇場で観たい!”である。
それとは別に、“劇場で観たら絶対火傷するけど、確かめずにはいられない”という多少のギャンブル精神もある。それが即ち、去年の「ガッチャマン」であった。
その「ガッチャマン」に続く、“実写化したらダメよダメダメ”シリーズ最新作「ルパン三世」、観て来てしまったのである。
幼少の頃から見て親しんできた「ルパン三世」。
そもそも、「ルパン三世」などのように、アニメで世界観もキャラも確立している作品を実写化する時点で、違和感ありまくりなのである。
邦画でも破格のスケールのグローバルなアクション意欲作だ。
が、コレジャナイ感が拭いきれない。
その一番の原因は、おそらく北村龍平だろう。
確かに、日本でスピーディーなアクションを撮らせたらピカイチだ。
しかしこの監督、「ゴジラ FINAL WARS」でもそうだが、自分のアクション演出だけに酔って、多くのファンを持つ作品への愛を感じられないのだ。
それはプロデューサーや脚本家にも難はあるが、実質作品世界を作り上げる監督の責任は重い。
大野雄二のお馴染みのテーマ曲を使用しないのも苦言。「GODZILLA」で伊福部音楽を使用しないのとは訳が違う。布袋のテーマ曲なんてどうだっていいんだよ!
さて、誰もが気になる配役については…
まず、小栗ルパン。誰が演じたってアンチ意見しか囁かれないプレッシャーの中、一生懸命、ルパンをやっていたと思う。
玉山次元は、アニメの渋さは無いが、今回の5人の中ではまずまず様になっていた。
一番の注目キャスティング、メイサ不二子は、とてもとてもあの男性憧れのボンキュッボンスタイルにはほど遠いが、クールビューティーさと小悪魔な魅力を振り撒いていたと思う。
浅野銭形は、若過ぎて哀愁を感じられず。
最も酷いのが、綾野五右衛門。落武者にしか見えない…。「つまらぬものを切ってしまった」ではなく、「つまらぬキャスティングをしてしまった」である。
娯楽アクションとして見れば、「ガッチャマン」より格段に面白い。
でも、幾らコミカルな要素をまぶし、全員が「ルパン三世」のコスプレをしてみせても、やっぱり“違う!”のだ。
ルパンにオマージュを捧げたオリジナルの怪盗アクションにした方が良かったのでは…?
銭形のとっつあんならこう言うだろう。
「この映画は大事なものを盗んでいきませんでした」