劇場公開日 2014年8月30日

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ルパン三世 : インタビュー

2014年8月26日更新
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「ルパン三世」一味が振り返るタイ・ロケの過酷な日々

ルパン三世、次元大介、石川五エ門、峰不二子――言わずと知れた「ルパン三世」の主要メンバーで、誰もが主人公になり得るキャラクターである。その実写映画化には小栗旬、玉山鉄二、綾野剛、黒木メイサと、こちらも主役を張れる面々が顔をそろえた。老若男女があらゆるイメージを持つ人物像を、それぞれの思いを込めて具現化。長期にわたるタイ・ロケでの暑さとの闘いも含めた惜しみない努力は、世界基準のアクション・エンタテインメントとして結実した。(取材・文/鈴木元、写真/堀弥生)

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「なかなか無謀なチャレンジをしようとするんだとは感じましたよね」

小栗の言葉が端的にハードルの高さを表している。連載開始から47年、アニメもテレビシリーズ、映画が連綿と生み出され続けているまさに国民的作品。その実写化となればファンならずともさまざまな意見が出て、イメージを膨らませるのは必然。4人も相応のプレッシャーはあったはずだが、それぞれが人気キャラを演じられることを意気に感じたようだ。

ここ数年でも「岳 ガク」、「宇宙兄弟」などコミックの映画化作品に出演することの多い小栗は、原作にとらわれない境地を見いだしている。

「自分の中でどれだけ寄せようと思って一生懸命やっても、見ている人によっては全然イメージと違うと言われるので、そこに関しては最近はあまり思わなくなっています。やることと言えば、自分が見たいルパン三世はどういうものなんだろうということを考えて、きっとそれに賛同してくれる人がいるだろうから、その数を増やせるキャラクターを生み出せるかどうかというのが自分の仕事なのかな」

次元を担った玉山は、作品全体のバランスが重要だと説く。

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「役者をやっている以上、使命感は常に付きまとう仕事なので、ルパンだけが特別という意識はないです。あくまでも与えられた世界観、台本、衣装などの中で、見ているお客さんの違和感を極力排除できるかということと、僕たち作り手のいい違和感をどこで見せられるかという、そのバランスが映画のだいご味。賛否があって当たり前だし、賛否がないといい作品だとは思わないので」

綾野はシンプルに五右エ門像と向き合った。

「五右エ門ってこうだよねっていう、ルパンをガッツリ見ていない人でも持っているようなイメージを体現したいなと思ってやっていました」

不二子に関しては、特に男性諸氏がさまざまなもう想を膨らませるであろうが、黒木も魅せられた1人。しかし、意外なところから認知度の高さを知ることになる。

「女性から見ても魅力的な女性なので、怖さよりもやらせていただきたい気持ちの方が強かったですね。ただ、ちょっとビックリしたのは、私の7歳、8歳のめいっ子がルパンを映画化することになった時に、『不二子ちゃん、やるんでしょ』ってすごいテンションで言ってきた時にはやばいと思いましたね。自分の認識が甘かったというか、今の小学生の子たちが見ているとは思っていなかったので(苦笑)」

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“四者四様”のアプローチを経て集結したルパン一味は、コミックの世界観を踏襲しつつ個々に映画ならではのオリジナリティも感じさせる。歴史の闇に消えた秘宝をめぐる大争奪戦を繰り広げるわけだが、主要なロケ地はタイ。外国人のスタッフ、キャストも多く何カ国語も飛び交うため、小栗いわく「何映画を撮っているんだろうという感じ」だったそうだが、過酷を極めたのが暑さだ。ルパンは、原作をイメージしベルベット調の赤ジャケットに革のパンツ。とても熱帯で着る衣装ではない。

小栗「大変でした。本当に(苦笑)。見ての通り、めちゃくちゃ暑いんですよ。だいたい中はビショビショでしたね。ずっとベビーパウダーを塗っていました」
 玉山「塗っていたね。懐かしい」
 小栗「革のパンツ、チョーむれるんですよ。すぐ汗もになっちゃうから、着替える前に必ず塗っていた」
 玉山「旬が着替えると、なんか白い粉が舞っていたよね」
 小栗「ずーっとそれだから、どんどん足だけ細くなっていっちゃって。足だけ“1人サウナスーツ”ですから。メイサも、最後の戦いはずっとレザースーツだったから、すごく大変だったと思いますよ」
 黒木「そんなご苦労があったんですね。私も暑かったですけれど、動きは問題なかったです」

そんな苦難もありつつも、ルパンたちの駆け引き、カーチェイス、ド派手な銃撃戦、スタイリッシュなアクションと息もつかせぬ見せ場の波状攻撃は見応えたっぷり。そんな多国籍軍を取りまとめたのが北村龍平監督。「あずみ」以来11年ぶりに組む小栗をはじめ、全員が賛辞を惜しまない。

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小栗「すごくタフな監督になっていて、俳優たちは俺が守るという姿勢を一貫して続けてくれたので、とても頼れる監督でした」
 黒木「不二子を本当に美しく撮ろうとしてくださって、すごく愛情を感じました」
 綾野「前衛的でいて、それを押し付けたりはしない。建設的に話してくださるし、ものすごく開放的な方でした」
 玉山「たまに子どもみたいに、モニターを見てすっげえ楽しんでいる表情を見ているとホッとするよね」
 小栗「監督自身が僕らのやることを楽しみながら見ていてくれたので、そのおかげで僕らも楽しくなるようなことはけっこうあったと思います」

さらに、余談にはなるがタイ・ロケのアップ時にもひと騒動あったという。最後まで残っていた小栗は、撮影を終えた1時間後に帰国便に乗らなければいけなかったのだ。

小栗「最初に玉山くんとメイサが同じタイミングでアップして、皆でお疲れさま会みたいなのをして、なかなか気持ち良さそうに帰っていったな、と」
 玉山「僕とメイサは、1日早く帰れたけれど、もうちょっと楽しんでいくかみたいな感じで1日多めに泊まって」
 小栗「3人は丸2カ月、タイだったので、最後の方は日本に帰ったらまず何が食べたいという話ばかりしていました。結果、すき焼きだろうという話になったけれど、それぞれがすき焼きを食べている写真を僕に送ってくる、みたいな」

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綾野は日本で別作品の撮影があったため、日本・タイを往復する日々だったが、アップは小栗より先になったためひと足早く帰国している。

綾野「鉄ちゃんとメイサが帰った後、たまにしか来ない僕と旬しかいなかったから、旬は多分どうしたらいいか分からない感じだったんじゃないですかね。行ったり来たりの僕でさえ、タイを出られたのがすごくうれしかったくらいですから、旬はとびきり心地よく帰れるんだろうなと思っていました」
 小栗「いやあ、なかなかの喪失感でしたよ。ガッツリ一緒にいた人間たちが帰って行った時は。でも、剛がいてくれて本当に良かったところもありますけれどね。その剛ですらサクッと帰りましたからね」
 黒木「なんだかんだあったけれどタイは楽しかったよねという気持ちで帰ったんですけれど、旬さんはその後大変だったんだあって思いながら聞いていました」

映画同様の“ドタバタ劇”も、今となっては笑い話にできる。それも撮影が充実していたからこそ。個性と個性をぶつけ合いながら、高い目標に向かって多くのハードルを乗り越えた4人。その熱情は間違いなく反映されている。ぜひともスクリーンで確認していただきたい。

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