「救われた命。」ローン・サバイバー ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
救われた命。
米国海軍最悪の惨事として記録されるレッドウィング作戦の
結末が分かっているだけに、4人が談笑する場面は辛い。
彼らにとっては日常(それが仕事)の戦闘であっても、
最悪の瞬間を全員が想起し、そこでどうするかという決断は
その場になってみないと分からない、という曖昧さ。
こういう戦いの時、いつも肝となるのは、司令部との通信切断、
指示が出ない限り狙撃はできない、ヘリで救援に行かれない、
○○部隊は他の応援に出向き基地にいない、兵士が極限状態
に追い込まれる早さに対し、救いの手はいつも終盤に到着する。
まさか映画の中でだけだろう、と思う事態が実戦で起きていた。
もちろん最悪の状況(岩山切立つ山間部)にいるのは承知だが、
それでは山羊飼いにさえ逢わなければ、彼らの作戦は無事に
成功したのだろうか…。それすら何ともいえない状況である。
通信手段がとれないだけで、この不遇を招いてしまう恐ろしさ。
タリバン幹部を早々に発見し、あとは狙撃命令を待つのみ。
通信回線の復活を願い、暫く身を潜めていた彼らの前に偶然、
山羊飼いの3人が現れる。このまますんなり通り過ぎて欲しい
ところだが、1人が足を踏まれる。丸腰の民間人を人質にして
ここで4人の意見が分かれる。彼らを解放すれば、タリバンに
囲まれるのは承知(もう分かっている)。ではどうすればいいか。
見つかった以上、作戦は即中止。救援ヘリを呼ぶしかない。
縛り付けておいて頂上へ向かうか。解放して頂上へ向かうか。
或いは…殺すか。選んだ結果が、彼らの運命を決定付けた。
凄まじい攻撃を目の当たりにして、私達は何度も思い返す。
あの時の決定が間違ってなかったか?なぜ解放したんだ?
軍規にも人道的にもそれは叶っている。でもそれで八方塞だ。
映画冒頭でしばらくの間、リアルな海軍訓練映像を流すのだが、
これだけの精鋭部隊だから失敗はしない。という先入観を見事
植えつけられてしまう。しかし実戦で追い込まれたら、死ぬまで
戦い続けるしかないのが分かる。何百人ものタリバン兵を狙撃し、
こちらも殉死を免れない。ただ一人の悪弊狙撃作戦がこの有様。
彼らが発砲している意味さえも、危うくなってくる。
止まない攻撃下、あとは自分と仲間の命をひたすら守るのみ。
こんな状況下でなぜ一人だけ助かることができたのか。
そこはやや意外なのだが、ほぼ偶然であり九死に一生を得たと
思うほどである。タリバンとの銃撃戦は最後まで続く。
アフガンの人々が皆タリバン兵ではないこと、アメリカを憎む
人間ばかりではないこと、醜悪としか思えない殺し合いを見て
不条理な現実が頭にどんどん蓄積される情け容赦ない戦争体験。
(最後に出てくる写真の面々。皆さんすごく体格がいいんだけど…)