X-MEN:フューチャー&パスト : 映画評論・批評
2014年5月27日更新
2014年5月30日よりTOHOシネマズ 日本橋にてロードショー
時空を超えた壮絶バトルが切り開く、シリーズの新たな可能性
遡ること14年前、ブライアン・シンガー監督の「X-MEN」はナチス収容所から語りを始動させた。あの絶望の淵で少年が見せた悲痛な表情はいまだに胸に焼きついて離れない。恐らくはあの瞬間、ヒーロー映画界にまったく新たな風が吹き始めたのだ。
本作はこれと対を成すように<未来>の絶望にて幕を開ける。そこはセンチネルと呼ばれるロボットによって人類が滅亡の危機に瀕した世界。生き残ったX-MENはウルヴァリンの精神を70年代に送り込むことで、すべての起点となった事件を食い止めようとする。協力者はもちろん、若き日のプロフェッサーXとマグニート。ウルヴァリンを送る際のご老人たちの台詞が愛らしい。「ああ、心配なのはむしろ、若き日の我々の方だよ……」。
彼らの懸念は正解だった。若きプロフェッサーは失意のどん底でやさぐれているし、マグニートはますます気難しい人間になっている。二人が逢えば衝突ばかり。その反面、離れていてもどこか互いを思い合ってる節もある。そして、いつもは勝手気ままで老人たちの手を焼いているウルヴァリンが、ここではチームを導く最年長となるのも面白いところ。何しろ今回は、彼の叱咤激励が若き師匠の心を奮起させたりもするのだ。この逆転現象にこそ、時空を超えたドラマティックな魅力がある。
<過去>と<未来>とで色調の異なるバトルには見応えがある。特に初登場のクイックシルバーが魅せるアクションは息を呑むほどの美しさだ。その一方、見事なプロットでシリーズの支流と本流を繋げた作り手たちの豪腕ぶりも賞賛したい。そこで彼らは徹底したタイムトラベル理論を応用するとともに、それを使ってビターな後味残る過去作をもさらりと回収してみせる。これでシリーズは翼を得たも同じ。今後の可能性は無限に広がったと言えよう。
シンガー監督の再登板により、テーマ性も活力を取り戻した。あらゆる人間が特殊な個性を認め合いその才能を羽ばたかせる、そんな世界を渇望したアクションドラマがこの先どう展開していくのか。各スタジオがヒーロー映画で凌ぎを削る今、次なる斬新な一手が楽しみでならない。
(牛津厚信)