「少女の葛藤を類い稀な映像が鋭く演出」イーダ もしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
少女の葛藤を類い稀な映像が鋭く演出
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孤児として、修道院に育ち、修道女になるための誓いの儀式を済ませる前に、唯一の肉親である叔母にあい、自らにまつわる様々な衝撃的な事実を受け入れ成長していく物語。
しかし、時代の波とはいえ、真実は少女にはあまりに重たくのしかかる。自らの名前がイーダであること、ユダヤ人であったこと、ユダヤ人だった両親は街の知人に殺されたこと、叔母には息子がいて、それも一緒に殺されたこと…。修道女として全てを神に捧げるべく育てられたイーダは強くアイデンティティを保とうとするが…。同じように事実を受け入れられなかった叔母の死で、その自我が崩壊しかけて…。同僚が修道女になるのを尻目に、キリストの像のまえで泣きながら「まだなれないわ」というシーンがとても印象的で、決意が揺らぐ心の内を吐露しているようで、とても悲しい気持ちになりました。時代の波に翻弄されながら、これだけの事実を受け入れて少女は大人になり修道女に…。
映像がとにかく素晴らしい。全ての映像が余韻を残す。病院で息子が殺されたことを知り、泣き崩れる叔母を抱きかかえるシーン、叔母が飛び降り、残された部屋の余韻、両親が埋められているという場所に行く3人のシーン、頭巾?を外し女性髪をほどき街にでるシーン、叔母のドレスを着てなれないヒールで歩くシーン、幸せなベットで彼に背をむけ目を見開き何かを思うシーン…。全てが彼女の計り知れない心情を物語っているようで、とても美しく悲しく切ない気持ちになりました。
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