嗤う分身のレビュー・感想・評価
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何だろうな?
作中何が起きていたかと訊かれると、どのシーンも「こんなことがあった」とハッキリとは答えにくい。参考になるレビューを書きづらい作品だと思う。
元ネタはドフトエフスキーの『二重人格』だそうで。
ドフトエフスキーならもっと有名なのあるだろ!とあまり文学に詳しくない自分なんかは思ってしまいますが(笑)、あくまで「元ネタ」に使っただけで、内容はかなりアレンジされていると思います。
映画全体の雰囲気は、日本でいう『世にも奇妙な物語』に近いかも。
エロもグロもほぼ無し。一瞬チラッとありますが、そんなにガッツリ映りません。でも子供と一緒に見るかと言われたら…ウーン。でも、集団生活を強要される子供の方が、案外共感できるのかもしれない。
一言で言えば、「他人に認識されない存在は、果たして存在していると言えるのか?」という内容だったのかなと思います(『二重人格』をきちんと知ってる人は、全く違った感想だったりするのかなぁ)。
あらすじ:
主人公のサイモン・ジェームズは冴えない男で、7年も務めている会社でも存在をすっかり忘れられるほど存在感が薄い。辛うじて同僚の1人と、コピー係のハナには認識されているが、親しい友人と呼べるほどの関係でもなく、向かいのアパートに住むハナへの片思いも拗らせすぎて、望遠鏡でハナの部屋を盗み見るようになっていた。いつものようにハナの部屋を望遠鏡で盗み見ていると、すぐ上の階の窓の外に一人の男が。望遠鏡でその男を見ると、男もこちらを見、ゆっくりと手を振ってくる。サイモンがぎこちなく手を振り返した瞬間、男は飛び降りて即死。警察が死体を回収した後、ハナに「彼は私をストーカーしていた」と聞かされる。それから、会社にサイモンと全く同じ外見、同じ格好(髪型や服まで同じ!)で、傲岸不遜な男ジェームズ・サイモンが新人としてやってくる。性格は正反対だったが、気弱なサイモンはジェームズに憧れ、最初は互いを補い合い仲良くしていた。しかし、ジェームズは徐々に高圧的になり、サイモンを利用し、居場所を次々と奪っていくようになり…
名前でわかる通り、サイモン・ジェームスとジェームス・サイモンは同一人物です。笑
サイモンはジェームスが入ってきた時「似すぎ~!」とビックリし過ぎてぶっ倒れますが、同僚からは「あ~言われてみれば似てるね。気付かなかったわ。だってお前影薄いんだもん」と言われてしまいます。お相手のジェームスはというと、こちらは勿論サイモンと自分の顔がそっくりなことは理解しています。同僚や上司等、他の人達は見分けが付きませんが、ジェームスが来るより前に多少仲良くなっていたハナは、ジェームスとサイモンの見分けが付くようです。
で、出てくる人物相関は結構単純で、サイモンと、施設に入っているサイモンのママ、お向かいに住む片思い相手のハナ、一卵性双生児並に外見そっくりのクソ野郎ジェームス、態度の悪いビッチな上司の娘メラニー。他は精々、上司や同僚、行きつけのダイナーの店員くらいしか出てきません。
ママや上司の娘はストーリー上は一応大切ですが出番は殆どないので、実質主要人物はサイモン、ハナ、ジェームスの3人だけ。
最初の辺りは、サイモンの妄想というか、幻覚なのかなーと思います。途中、ハナと仲良くなったのも幻覚だったら悲しすぎんなーと思ってしまいましたが、そんなことは流石になかった。笑
ほんの少しだけクスッと笑える場面もありますが、基本的に陰鬱で、暗い雰囲気の映画です。最後の方なんか完全に精神異常者。でも殆どの人は孤独に敏感で、このようになる可能性を秘めているのかなという感じもします。
自分はあまり孤独を感じるタイプではないので、会社で友達1人もいなくても別に良いよね~とか思ってしまいますが、仕事デキると周囲に思われている同僚に、自分のやった仕事を横取りされるのは確かに不愉快。一生懸命やったのに上司からは役立たず扱いされるわけだし、外国じゃこれで実際「仕事できない」と判断されてクビになったりするらしいですし。ある意味、自己主張しなくてもそこそこやっていける日本とはちょっと違いますね(逆に自己主張すると内容が正当でも「争い自体メンドイ」という理由でクビになる日本ですが…)。
ラストは一応ハッピーエンド…?なのかな?
イギリスの映画って、こういう「ほんのり」ハッピーエンドが多い気がしますね。アメリカみたいに「敵倒した!皆生きてる!やったぜ!」みたいな終わり方じゃなく、「頑張ればギリギリこれから持ち直せるかも」くらいの希望を持たせた終わり方というか。
ところで、最初の自殺したオッサンの件を参考にして、最後ネットの上に飛び降りたサイモンですが、サイモンは生きてて何故ジェームスは死んだのか?
結局、サイモンがジェームスと決別したいと思えば、あんな手段を取らなくてもジェームズは勝手に消えたのか?それともサイモンの思い込みが強すぎて、もはや気持ち程度じゃ消えなかったのか?サイモンは本当に精神病だったのか?
ん~、わからん!
ドフトエフスキーの『二重人格』では、主人公は本当に精神病になってしまい、本人としてはあまりなりたくない自分が二重人格として現れてしまう、という話らしいですが、「なりたくない自分」って「なりたい自分」と紙一重だったりもします。
心理学的にも、いつもちょっと待ち合わせに遅れて来るとか、人に甘えてばかりの人とか、そういう「やや我儘な人」が絶対に許せない!みたいな人は、実は自分もそうやって我儘に振る舞いたいのに振る舞えないから、他人がそれを平然とやっているのを見ると腹が立つ、という理屈がありますね。
全ての人がそうとは限りませんが、確かに会社でうまくやっているジェームスに、サイモンは最初憧れています。それが行き過ぎて、自分の脅威になるまでは。
サイモンが精神病を克服できたのかどうか、そもそも精神病だったのかどうかすら作中では名言されていませんが、『二重人格』の通りだとすると、多分どっかで精神病になって分裂したけどどっかで克服したんでしょう。知らんけど。
だとしたら、会社で2人が同時に現れて仕事の成果を搔っ攫ってくとこなんか、周りの人達はどういう風に見てたことになるんだろ?やっぱり、そこはサイモンの幻覚ってことになるんだろうか。ハナのストーカーも、実際にはサイモンがやってたってことで…(覗きは実際やってたし)
でも何となく仄暗く、少しだけ不気味で、個人的には好きな雰囲気でした。雰囲気ホラーみたいなのが好きな人にはわかってもらえるかも。
VODで今日までの作品だったので慌てて見たのと、途中で何度かエラーが起きてページ更新したので、イマイチ集中できなかったせいか、よく記憶に残らない作品でした。大それたテーマだったのはわかるんだけど、個人的には今一歩だった気がします。と言っても、元ネタが地味なこの作品を選んだ時点で、制作陣は別にこの作品を大ヒットさせたいとは思ってないのかもしれませんが…
でもあと一歩で☆4くらいの評価は目指せた気がします。
あと、昭和の日本歌謡が3曲ほど使われているのは何故?
オッサンが自殺した後に流れた「上を向いて歩こう」はちょっとした皮肉か~?と勘ぐってしまいましたが(笑)、見た目はあんなバリバリの外国映画なのに、案外雰囲気に合っていて良かったです。ブルーシャトウも良かったですね。
ちなみにEDは多分中国語。何で????
ごっちゃごちゃの多国籍(て言っても3か国か)を感じる、謎の映画でもありました。
オススメは特にしませんが、仄暗い・淡々とした・ワケわからん・不気味な映画が好きな方に。
自分を奪う自分
開幕早々、ヘン。
主人公の青年サイモンは列車に乗ってると、見知らぬ男から「そこは俺の席だ」といちゃもんを付けられる。
列車を降りようとすると、荷物の積み込みが始まり、なかなか降りられない。
やっと降りたと思ったら、鞄を扉に挟まれる。
出社したら、もう7年も勤務してるのに、警備員に止められる。
ヘンと言うか、ついてないとしか言い様がない。
隣のアパートに住む美人同僚ハナを望遠鏡で覗き見する事が唯一の楽しみのサイモン。その日も覗き見してたら、アパートから男が、こちらに手を振って飛び降り自殺するのを目撃する。
ここからまるで出口の無い迷宮に入り込んでしまったかのような…。
そして、職場に新人がやって来る。自分と瓜二つの青年、ジェームズ。
自分の前に自分とそっくりの人物が現れ…というのは、映画でよくある題材。
いつぞや見たドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『複製された男』は難解であったが、こちらはとにかく奇妙でシュール。
終始、ヘンな夢を見てるよう。
話を理解しようとすればするほど、訳が分からなくなってくる。
この不思議な感覚、不条理さに身を委ねる作品であると感じた。
ドストエフスキーの名作を近未来に舞台を移して映画化。
とは言ってもその近未来の世界観は、レトロな雰囲気。
背景音楽として日本の昭和歌謡曲が多く流れるのがユニーク。
とあるシーンでは、あの名曲が主人公の心情とリンクしていた。
容姿のみならず服装まで同じ。
ここまで似てると薄気味悪くなってくる。
唯一違うのが、性格。
内気なサイモンに対して、魅力的なジェームズ。
職場の人気者になり、ハナといい雰囲気に。
自分の全てが奪われる…。
これが全くの赤の他人だったら諦めつくかもしれないが、自分とそっくりの人間が…と思うと、気が気じゃないほど恐ろしくもある。
でもとにかく、奇妙・ヘン・不思議・シュールな作品だった。
世にも奇妙な物語的な
・ある日自分にそっくりな人物が入社して、自分の居場所が奪われていく話
・坂本九の「上を向いて歩こう」や昭和歌謡がやたらと掛かるのは何か意味があったか?
・鏡に写る自分、見る見られるの関係、持つ者と持たざる者、そんなことをつらつらと考えた
・凄まじい台詞の応酬
・飛び降りて救急車の中「特殊な存在でありたい」と言い残し目を閉じるラスト
・向かいのアパートの好きな女の子を望遠鏡で覗く「裏窓」だ
・レトロフューチャーな世界観が不思議
シュールなファイト・クラブ
リンチやT・ギリアムにキューブリックな雰囲気で昭和歌謡など良さげな感じでオチは「ファイト・クラブ」にも似た方向性で!?
主人公のあり得ない位に理不尽な環境に本人の気弱さに若干、イラっと。
チョット、注目したい監督ではある。
これが自分なら嫌
分身が酷すぎます。
こういううまく立ち回れる人っていますよね。
でも最後はスッとしました。
最初に自殺した人が分身を倒す伏線だったんだと思います。
「後遺症が残るが無事だった」
それに気づいたので分身を手錠で縛って自分は救急で運んでもらえるように見えるとこに落ちる。そしてそれがうまくいってあの安堵の表情。当然手当が施されない分身の方は死んでしまいますね。
でも、この後死体の処理とかどうするでしょう。存在が気づかれない“自分”は殺して分身として生きるんでしょうね。
そこまで面白いか?
ドストエフスキーの作品を映画化した作品とのことですが
文学については詳しくないので、少々難解ではあったけど
主人公の二重人格なのか、妄想なのか・・・
その両方が重なり合ってる感じなので、不思議でしたね。
ただ、面白かったかと聞かれたら「そんなに面白くはないよ」と答えますね。
映画の冒頭から結尾まで 独特の世界感が広がっています。
すごく抽象的な作品なので、好きな人は好きなのかなー?
望遠鏡で向かいのアパートを覗くシーンは、まるでヒッチコック監督の「裏窓」でした。
「裏窓」は凄く面白いですけどね!
難しすぎる
かなり頭を使って集中して観ていたけど、情報は少ないしタネ明かしがないしで観終わっても全く意味わかりませんでした。
時代も場所もよくわからなかったのは、そういう世界観だったからかな?
日本人なら反応しちゃうあのBGMは良かった。
演技や演出は文句ないけど、あと3回は観ないと理解できる自信がない(笑)
わたしの理解力の低さも原因ですが、とりあえず初見はこの評価で。
60年代?近未来?ロシア?引き込まれました^ ^
あまり前情報を入れずにソーシャルネットワークにでてた人(ジェシー・アイゼンバーグ)がでてくるくらいで鑑賞。
1960年代?近未来??場所もロシアぽくもあり、ヨーロッパぽくもあるロケーションで、リアルな世界なのか内面的な世界を演出しているのかわからず、どきどき感をうまく演出してたと思います。
でっかい異様なサイズのコピー機とか、そもそも何やってる会社なのか、大佐って結局誰だったの??舞台のディティールは詳細に分解してほしいなあ。「ブルーシャトウ」とか日本ソングが挿入されてた訳とかも!時代を重ね絵的にみせてたのかなあ、気になったけど。
途中から見た目は全くうり二つだけど、キャラが全く自分とは正反対の自分が登場してくることで、徐々に自分が変わっていく様を追っていくストーリー。
自分は棟違いのところに住む女性に心寄せるけど、なかなか告白できない。そんな自分を尻目にもうひとりの自分??は、ついにその彼女を奪ってしまう。
どこまで夢?どこまでリアルというのが結局最後までわからず、集中してみちゃいました。時間も90分ちょいで、ちょうどよかった。もう何回かみないとほんとのとこはわかんないかんじだけど、浅い理解でも深く理解してもそのレベルで楽しめる映画だと思います。夏くらいにあった「複製された男」よりはわかりやすいかな。比べること自体どうかとも思うけど(苦笑)
原作も読んでみたい。邦題珍しくあってると思う。(ちなみに嗤うはあざけるといったときに使うとか。)
単調で長い (u_u)
ドストエフスキーの「分身」
近未来的なSFに置き換えた設定は興味深かったが、単調すぎて何度も寝ちゃいました…
家で観たら完全に熟睡パターンw
新たなるシビれる才能!
とにかく溢れ返る「センス」に圧倒される一本。
トーンを落としながら、色彩と光で魅せる時代レスな画面と、そこから紡がれる作品世界。
そして何よりも…
「ブルーシャトー」や「上を向いて歩こう」などの昭和歌謡を、堂々と劇中で流す音楽選びの妙ったら!
(EDにはハングルのフォークをぶち込んでくるし!)
古典にネタを取った、よくあるドッペルゲンガーものが、溢れる類作と一線を画すのは。
兎にも角にもこうした監督の「センス」に圧倒されるという点だと思う。
(「ドライブ」の初見の時のような衝撃、と言ったら分かりやすいか)
加えて。
一人一役ふたパターンを完璧に演じ切った、みんな大好きジェシー・アイゼンバーグのポテンシャルの高さ。
そして見事にチョイ暗ヒロインにはまったミア嬢。
少ない登場人物ながら、いや故にそうした俳優陣の実力が光るのも嬉しい。
中毒性の高い、クセになる作品。
世にも奇妙な物語
ジェシー・アイゼンバーグの一人二役が素晴らしかったなあ〜
と感じるまで
映画館からの帰り道中、作品の世界観からまったく抜け出せなかったです。
狂気、不気味さ、陰湿、霧、暗闇、刺激、電球色、謎、美、
すべてのワードがマッチする
ホラーでありサスペンスでありブラックコメディ。
まさに「世にも奇妙な物語」。
あの世界観が好きな人なら
きっと"嗤う分身"の追走からも抜け出せなくなる…‼︎
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