オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴのレビュー・感想・評価
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命の枠組から外れた者たちの終わらない夜宴
正真正銘の、ジャームッシュ作品ですね。
笑いスレスレ、下手したらギャグに転びかねない展開を危ういままに、しかしきちんとシリアスに描く手腕はまさしく彼の特徴です。
絵空事というか、世間一般で認知されている吸血鬼の設定を、殆どアレンジ挟まずに臆面もなく堂々と現代21世紀の舞台に落とし込むなんて、或る意味ではリスキーな世界観の提示というかね。でもそれこそが、紛れもなくジャームッシュの作品なんですよ。だから良いんです。さっきから彼の作品だって主張を連呼してますけども。
しかし、ジャームッシュのヴァンパイアは、それでも余所とは一味も二味も違うんですね。
哲学、思考のループに絡め取られながら生きているというか。
命の枠組、輪廻から外れた彼らは人間=ゾンビを蔑み、回転するレコード盤に自身をなぞらえ、死んだままに永遠の命を彷徨う。その矛盾。
永遠の人生、それは幸せなのか不幸なのか。そんな一辺倒な幸福論は最後まで登場しない。所詮アンダーグラウンドに生きる者は、飽くまでアンダーグラウンドなる生き方に囲われる。
面白い物語体験でした。
かっこいいロキ
最初の人間、アダムとイヴってことなんでしょうか。
最後、怪異の王としては高潔かつ気品ある死を選ぶ、の方がかっちょいいと思いました。
かっこいいロキを観にいって本物の女吸血鬼と遭遇してしまったよ…、って感じ。
アメリカから遠く離れて
前回のスペインから、タンジール→パリ経由でデトロイトへ。かつての劇場今は駐車場と、ホーリーモータースのリムジンが集まる駐車場。比べるべきは、リミッツオブコントロールではなく、ましてやデッドマンであるはずもなく、パーマネントバケーションのアロイシスパーカーであるはずだ。
映像もさることながら…
聴かせる映画です。全編に漂うミスティックな雰囲気と、それにマッチするアラビアンなムードのBGM。最後は実在するレバノンのミュージシャンをそのまま出演させて、なんとも粋な演出。ありきたりなヴァンパイア映画とは一線を画した、玄人向けの作品です。
ジム・ジャームッシュの世界観
彼の作品は初めて観ましたが、テンポと雰囲気がとても気に入りました。
ティルダとトムの演技もヴァンパイアなのにどこか人間ぽいところもあり、それぞれとても印象的でした。
二人の愛し合い方もイイですね。
とても気に入りました。
心地よいダークさとユーモアと耽美
ジム・ジャームッシュのヴァンパイア物って、
どう料理するんだろうって思ってたら、
ダークだけどピリッとしたユーモアもあって、
アナログの良さ、ノスタルジアなのかな?
耽美といっていいのかな、、
心地よい作品でした。
とにかく二人の会話・関係がとても観ていて心地よい。。。
雰囲気・空気感はナイト・オン・ザ・プラネットを思い出しました。
それを妹がぁ~~>_<
大人のヴァンパイア映画
ヴァンパイアの主人公アダムとイヴを演じるトム・ヒドルストンとティルダ・スウィントン、それに老ヴァンパイアの文筆家マーロウのジョン・ハートを加えた3人の達者な演技に見とれる。血液を口に含んだあとの満たされた恍惚感と、同時に神経が研ぎ澄まされていく様子を表情の変化だけで表現する。巧い。若手の演技派筆頭といわれるミア・ワシコウスカも、さすがにかなわない。
この作品のヴァンパイアはむやみに人間を襲ったりはしない。何世紀もに渡る寿命を持ちながら、自分の時間を大切にした暮らしを送る。いや、時間があるからこそ生き急ぐ必要がないのかもしれない。時の流れに身を任せられる生活は人間にとって、とくに現代人にとって理想の姿といえる。
長い年月の中で、ときには歴史的な出来事に絡んできた彼らから見れば、人間の行動は他愛もなく浅はかで短絡的に違いない。
彼らヴァンパイアは夜しか街に出ない。『歴史は夜つくられる』を地で行くような存在だ。
派手なVFXはないが、現代社会が慢性的に抱える諸問題をすさんだ人間の体に流れる“汚れた血”に置き換えた風刺が垣間見える、大人のヴァンパイア映画だ。
すべてのシーンが夜だけという珍しい映画でもある。
環境汚染で、なんとヴァンパイアも絶滅危惧種に。
原題は1964年に発表されたSF小説“Only Lovers Left Alive”と同じ。劇中でもイヴが愛読書として、旅先までも携帯していました。
この小説は大人が全員自殺してティーンエイジャーたちがやりたい放題する社会の出現を表現しています。そんな世紀末の到来を予見した原作になぞったか、本作のルックはジャームッシュ監督が説明するヴァンパイアのラブストーリーというよりも、強烈な皮肉を込めた社会風刺の作品といったほうが分かりやすいでしょう。何と言っても、文明の発達は、人間の体内に様々な科学物質を取り込み、もはやヴァンパイアが安心して、人間を襲えない状況となっていたのでした。もしも、衝動的に不特定多数の人間の血を摂取すると、永遠に近い生命を生きられる長寿のヴァンパイアでさえ、命を落とすことになってしまうことさえ描かれていました。だから現代のヴァンパイアは、身の安全のために不特定の人間を襲うことをやめて、信頼できる医師を通じて、安全な血液を入手していたのです。その原因は近代化による水質汚染。地球の環境問題が、ヴァンパイアの棲息も追い詰めているのだという本作の主張は、なかなか面白い着眼点だと思います。
ただ作品としては、セリフなしの比喩的なシーンが多いのと、主人公のアダムが伝説のインディーズミュージシャンという設定なので、ライブやレコードを聴いているシーンが長いところが気になりました。もっとテンポを上げてサクサクと語ってもらいたいところです。
余談ですが、アダムのモデルとなったミュージッシャンは、きっとローリング・ストーンズのキース・リチャーズではないかと思います。風貌が似ています。また、妻のイヴが暮らすモロッコのタンジールには、彼らの別荘があり、アルバム「コンチネンタル・ドリフト」は1989年にタンジールで録音されています。ちなみにジャック・スパロウ船長はキースをイメージして演じた、ジョニデは公言しています。キース自身も2007年、シリーズ3作目『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』でジャック・スパロウの父親、ティーグ役として出演。映画とつながりの深いミュージッシャンです。
但し、アダムの異常なほどのいろんな楽器を器用に弾きこなし、異常なほどの楽器フェチなキャラは、ローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズから引き継いだものではないでしょうか。
ところで、彼らの名前から察するに、旧約聖書の創世記のころから生きてきたのでしょう。その時々の文明の芸術や文化や思想を司る歴史的有名人を影で操って、影響を与え続けてきた彼らは、凄くプライドが高いのです。普通の人間をゾンビと見下していました。 アダムの自慢話の一つに、シューベルトの曲は、こうやって作ったのだよと、まるで本人の守護・指導霊になったかのような感じ。
また、イブの父親で「先生」と呼ばれるマーロウは、たくさんの戯曲を書いており、もしかしたらシェイクスピアのゴーストライターをやっていたのは、彼なのかもしれません。
単なる健康問題ではなく、そんなプライドの高さが、人間を襲うことを野蛮な行為として、葬り去ったのだと思います。台詞でも、どんなに飢えても「そんな15世紀の昔にやっていたことになんてやらないしてしない。」ということが何度も語られます。
ただ安全な血液の入手ができなくなったことで、生命の危機を感じた彼らはどんな選択を行うのか、すごく興味深いラストでした。
さて、物語は至って単純。夫のアダムは、どんな弦楽器でも弾くことができる天才的なミュージシャンとして、デトロイトで人知れず暮らしていました。会うのはプロモーターのイアンだけ。イアンはアダムの依頼でエレキギターの名機を買い集めていたのです。それ以外ファンの若者たちとも一切会うこともなく、住所も極秘に。
アダムは、1960年代以降の文明については否定的。iPhoneを使いこなしてテレビ電話してくるイヴに対し、アダムは、わざわざノートパソコンを、50年代の丸形テレビにつないで会話していました。パソコンは仕方ないのかな?
モロッコとデトロイトとの遠距離恋愛に淋しさを感じたイブは、夫の元に駆けつけます。移動はヴァンパイアなので、いつも夜間。だから飛行機の発着時間にも気を使わなくてはいけないので大変です。
デトロイトに着いて、夫の邸宅に向かうイブが見るデトロイトの町並みは、自動車産業の衰退で、ゴーストタウンとなっていて、ヴァンパイアが隠棲するのにピッタリです。
相当長い間会っていなかったふたりは、久々の逢瀬を楽しみます。ヴァンパイアだって、エッチはやるようです(^^ゞ
昼は寝て、夜は起きてデートを楽しむ平穏な日々が続くふたり。特に血液を呑むときの至福の表情が印象的でした。
そんなところに押しかけてきたのが、イブの妹のエヴァ。大切な血液のストックをがぶ飲みして、イアンとはイチャイチャとやりたい放題。血液を取り上げられたエヴァは、ついついイアンを襲って殺してしまいます。死体の処理に困ったアダムとイブは、どんな選択を行うのかというものでした。エヴァの脳天気さが、ヴァンパイアらしくなくて面白いところです。
最後に、本作では「ぐるぐる回るもの」が、メタファーとして扱われています。
オープニングでまるでアダムとイブがが同じ場所にいるかのように、シンクロしてぐるぐる回っているかのように映し出された入り、しつこいくらいにアナログレコードがぐるぐる回っているところがアップされたり、テープレコーダーの大きなオープンリールがぐるぐる回っているところが映し出されたりします。
ふたりは時々、量子物理学の議論をかわしていました。この廻るという概念、そして離れた場所の存在がシンクロはして動くというメタファーが意味しているものとは、量子もつれでわかる新しい量子力学の世界を象徴しているものと思います。それは、「2つの量子は離れていてもつながっている」というアインシュタインを悩ました現象でした。とても難しい概念なので、「量子もつれ」とは何かと「不確定性原理」について、興味がある方はお調べ下さい。
きっとジャームッシュ監督は、彼らは「量子もつれ」を操作して、永遠の生命を手に入れているということがいいたいのだと思います。
人生初ジャームッシュ監督作品
とにかく監督の趣味趣向が堪能できる作品であったのではないかな、と思います。
監督の好きなモチーフ、好きな場所、好きな小物、好きな音楽、好きな車楽器小説美しきアウトサイダー達…etc.
かといって、馴染みににくさや独特なくさみのようなものもなく、初めて見たジャームッシュ監督作品がこの作品で良かったと思えました。
アダムとイブのキャラクターもさることながら、終始穏やかな退廃を思わせる物悲しさの中でおりなす日常も魅力的。
駄目になっていく人間や世界に暗い批判を被せながら、それでも2人で愛し合いながら生きようとする姿勢は美しいの一言。
しかしまぁ吸血鬼というものはなんとも儘ならぬものですね…。
話の中で出てくるユーモアや固有名詞のネタも見ている内はよくわからなくても、普通にスルーできる軽さでしたし、さらにパンフレットを読めば理解できる親切さ。
無知にはありがたいです。
そして理解した上でまた見てクスリと笑いたい。
とことんまで作品を楽しみたいと素直に思える良い映画だと思います。
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