「エンタメとしては弾けないけど、美術品と名も無き英雄たちに…」ミケランジェロ・プロジェクト 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
エンタメとしては弾けないけど、美術品と名も無き英雄たちに…
当初の日本公開がいつだったか覚えてないくらい続いた公開延期~中止。
晴れて、昨年秋に公開。
地元では上映しなかったので、レンタルになってやっとの鑑賞。(当初通り公開してたら今頃とっくにWOWOWで放送していたかも)
日本公開が決まる前から見たかった作品。
だって、この題材にこのキャスティング。
長い歳月を経て見てみたら、う~ん、何て言うか…。
第二次大戦時、ナチスに奪われた美術品の奪還作戦に挑んだ特別任務隊“モニュメンツ・メン”の活躍を描いた実話。
ジョージ・クルーニーを筆頭に、マット・デイモン、ケイト・ブランシェット、ビル・マーレイ、ジョン・グッドマン、ジャン・デュジャルダンら豪華な面々をスカウト。
往年の戦争マーチを彷彿させる軽快なテーマ曲。
「特攻大作戦」か「戦略大作戦」か、はたまた戦争版「オーシャンズ11」のようなエンタメ作戦開始!
…ア、アレ?
一向に盛り上がらない。
一向にワクワクするような見せ場、展開が無い。
1時間を過ぎてもまだ。
人間模様、美術への思い入れをじっくり、淡々と…いいや、この際はっきり言おう。
ダラダラと退屈な時間が続く。
改めて監督の名を思い出して納得した。
そういや、クルーニーが監督してた。
「グッドナイト&グッドラック」「スーパー・チューズデー」など良質だが、シリアス過ぎる作品が多い。
別に本作もずっとシリアスって訳じゃなく、個性的なチーム、往年のエンタメ戦争映画へのオマージュと見れるライトな作風、ちょいちょいのユーモアを挟んでいるものの、今一つ弾けない。
クライマックス、やっとスリルが盛り上がると思ったら、特に盛り上がらず、いつの間にか作戦終わってた。
もしソダーバーグが監督だったら、もっと巧みに捌いていただろう。
それこそスピルバーグだったら、エンタメ性も緊迫感もドラマ性もメッセージ性も全て見事に演出していただろう。
クルーニー監督はエンタメ作よりシリアス作向きで…。
別につまらない訳じゃない。
そもそも、クルーニー演じる主人公は根っからの軍人じゃなく、美術館館長。
言わば、民間の立場からの奪還作戦。
モニュメンツ・メンも実在なので、アクション映画のような活躍が出来る訳がない。
だから、この作風はこの作風でアリなのだ。
でもやっぱり、映画としてはもっとエンタメな活躍が見たかったという欲が…。
しかし、これだけは言える。
アドルフ・ヒトラーは若き頃画家を目指していた、というのは有名な話。
歴史上最悪の独裁者が美術を愛していたなんて、この独裁者の人間的な一面を垣間見た気もする。
が、それらを独占しようとする辺り、傲慢で愚かである事を裏付ける。
美術品は歴史の遺産。
全人類の財産。
遺し、受け継がれていくべきもの。
戦争は人命だけじゃなく、歴史的財産をも奪った。
そんな戦争から歴史的財産を取り戻し、守った。
名も無き英雄たちが居た事を。