あなたを抱きしめる日までのレビュー・感想・評価
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せっかくの製作陣の想いが昇華されなかったような…
邦題名が「あなたを抱きしめる日まで」
だったので、最後には子供に会えて、
との話かと思い観ていたら、
作品の半ばで彼が死んでいることが判り、
この先はどうなることやらと
案じながら残りを鑑賞した。
途中、英米の文化の違いや
ジャーナリズムと市井の葛藤、
また、LGBTの現状や
性への欲望と純潔性との整合性等、
盛りだくさんのアプローチがあったが、
原作本を書いたそのジャーナリスト役の
言葉からは、
やはり宗教批判の視点からの作品のように
感じられた。
アイルランド修道院の酷い暗黒面を
採り上げた作品だが、
名優ジュディ・デンチを配役した影響が
あってか、生き別れた息子を探す女性が
主役的に扱われ、作品の中でも
米国行きを楽しんでいるのが彼女の方で、
問題により真剣に向き合っているのが
ジャーナリストのように
描いているのだから、
彼を徹底的に主役に据えた方が、
テーマがより明確になったような気がした。
また、各処に見られる微妙に長い間合いが
冗長さを感じさせ、
全体的に演出の妙も感じられず、
せっかくの製作陣の想いが
昇華されないで終わってしまったような
印象を受けた。
5/17再鑑賞
皆さんの評価が押し並べて高く、
自分の理解が不充分ではなかったのかもと
思い再鑑賞した。
しかし、母親は冒頭から寛容性の高い女性
として描かれている中、
終始、彼女の人間性に変化があったようには
見えない。
むしろ、ジャーナリストが記事にしないと
言ったのは彼女の影響だったのかも
知れないが、
それに対して、彼女が記事にして良いと
事件を明らかにする行為は、
彼女の寛容性とどう関連付けたかったのか、
彼女の社会意識の芽生えとしたかったのか
分からなかった。
結果、今回も感動に繋がらなかったのは、
テーマの深刻さの割には、製作陣に
表現の上での技術的な不足があるように
感じてしまったためだろうか。
赦し
意に反し幼い息子アンソニーと生き別れとなってしまう女性フィロミナをジュディ・デンチが好演。顔に刻まれた皺が歳月の長さを感じさせる。華やかな人生を送る息子マイケル・ヘス( 幼少期名:アンソニー )のビデオ映像を見つめるフィロミナの心の内は…。
終始誠実な対応をする元BBC支局員、ジャーナリストのマーティンをスティーヴ・クーガンが知的な魅力で演じる。
ー聖心修道会
ーレーガン&ブッシュ政権の主席法律顧問
ーケルティック・ハープ
NHK-BSを録画にて鑑賞 (字幕)
さすが貫禄のジュディデンチ
人としての強さ
「私は純潔を守った、そんな私の行いを裁けるのは神だけ」という車椅子に乗った高齢のシスター。高慢というより、箱庭の中で自己肯定を繰り返すだけの孤独で哀れな老人。
私もマーティンと同様に、自分の行いを棚に上げて人の過去をなじる不寛容な姿勢に強い憤りを感じた。
しかし、フィロミナは、そんな相手に許しを与えるという。教会に盲従し自らを貶めていた頃とは正反対の姿。
そこに、私もこうありたいと思わせる、人としての強さを感じた。
人身売買を許すって…
確かに主人公の真の信仰心と「赦すことは大きな苦しみを伴う」はクライマックスに相応しい精神性の高さを感じました。
しかし、客観的にみて当事者達の複数の人身売買について許しちゃって話が終わった事に驚きを隠せません。
ハートフルと思いきや…?
フィロミナさんこそ奇跡。人としての器。
「赦しには苦しみが伴うのよ」それでもあなたは「赦す」という。どれだけの思いで発せられた言葉なのだろうか。
この、人としての器の大きさを示す言葉を、絞り出すように口にしたのは、
宗教者でもなく、
国一番の大学を出て政治の中枢に関わっていた、知的なエリートでもなく、
車に乗ればお菓子を差出し、ビジネスクラスや高級ホテルのサービスに興奮し、今直面している悩みのためとはいえブランデー1本を一人で空けてしまい、とんでもない言葉を口にし、リンカーン記念館よりTVドラマに興味を示し、ロマンスが大好きな、下世話で俗物っぽく描かれる田舎のおばさん。
正直、品性が劣ると見下しがちなおばさんが、シスターよりも、かってファーストクラスに乗っていた記者よりも、実は人としては格段に人格者というラストの衝撃。
勝ち組・負け組という言葉は嫌いだとか言いつつも、どこかで人を値踏みしていた自分に気づかされて、冷や水を浴びせられたような気分になった。
他にも「上り坂の時に会う人は、下り坂の時にも会うから、いつでも感謝を忘れないことよ(思い出し引用)」とか、はっとさせられた。
趣向もそれまでの生き方も合わない二人の珍道中で、重くなりそうな話を重苦しくさせないための脚本と思っていたエピソードの数々。それが最後に大逆転として意味を持つ。
勿論、息子の生きざまによっては赦しどころの話ではないだろう。
そして、どんなふうに成長しようが、成長を見守り育てたかったという時間のロスは埋めようもない。
簡単に”赦す”という言葉ですむ話ではない。苦しい。苦しさに押し潰されそうになる。心がどす黒く染まっていく。そこに一条の光=”赦し”。その葛藤の繰り返しなのではないか。苦しさを手放す手段としての”赦し”。尤も、これが一番難しいのだけれど。
フィロミナさんは敬虔なカソリック信者だが、ある場面で教会に告解に行くものの、教会を出る時、聖水をまかなかった時がある。信仰を捨てたのか?
そして、”赦し”。
既存の”神””宗教”という枠組みを超えた”赦し”? 教義とかそんなものに縛られない、もっと高次元の、普遍的な”赦し”。
だから、カソリックを糾弾するのでもなく、一つの事実として、息子の生きた証として、本にまとめて欲しかったのかな。
この時代の教会での人身売買を簡単には非難できない。
『この道は母へと続く』でも、孤児の人身売買は描かれていて、もっとシビアな現実まで盛り込まれていた。
未婚の母。カソリックの根強い地域では、相当な苦労を強いられて、母も、子も、まともに生活できないと聞いている。売春婦や乞食等になって生きていく以外なかったと聞いている。
そして、子を育てるにはお金がかかる。昔の孤児院のイメージとしては『赤毛のアン』の栄養状態も悪くガリガリの体。今も昔も寄付や税金をつぎ込む以外に道がない。今の日本はタイガーマスクが時折現れるし、税金もあるけれど、昔は?
親と子。両方への情報提供も難しい。中には、実の親子とはいえ、恐喝ネタになる場合もあるし、それぞれの家族のこともあるし。
事態は複雑で一概に”こう”すればいいというものではない。
という事情を考えたとしても、
希望しない親の子を養子に出すなんて。
亡くなった方のお墓もちゃんとされていないなんて。
お互いが求めあっているのに、ひきあわせないなんて。
それが、快楽を求めた罰だなんて。
それが、宗教の教義だなんて。
否、聞くところによるとイエス・キリストは売春婦を弟子にしたとか。
となると、神の前に、自分だけ良い子でいればいいと言う、自分だけが正しいと言う、他を顧みない傲慢な態度が一番問題なんだろう。
だけれども、フィロミナさんは赦した。心の中に息子を抱きしめて。
まるで、観音様のようだ。
演じるデンチさんが素晴らしい。
ク―ガン氏は、『80デイズ』でも絶妙な演技をしていらしたが、ここでも良い味出している。
このお二人の抑えた、けれど、十分に伝わってくるおかしみ、悲しみ、怒り、絶望と救いがあればこその映画だと思う。
フィロミナさんは、ご自身の中でご自身なりの着地点を見つけられたようですが、他の引き裂かれた母子にも幸せが訪れますようにお祈りします。
ケルティッシュ・ハープ
政府の要員になっていたアンソニーは、胸に小さな金色のケルティッシュ・ハープの記章を着けていました。
「どこかにいるお母さん! いつかテレビか新聞か、それとも雑誌の片隅で、僕のケルティッシュ・ハープに気づいてね」
そういうことだよな・・
今夜はちょっと泣きながらギネスビールを買ってきて飲みたい気分です。
派手さのない小品でしたが、魂にしみる映画でした。
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「イタリアは呼んでいる」では軽薄でTV カメラ目線をたびたびやってしまっていたスティーブ・クーガンだが、この映画では企画から立ち上げただけあっていい演技だった。
ジュディ・デンチのあの役の入れ込み様を間近に見れば、共演者側も渾身の演技を引き出されてくるというものだ。
そして50年というギャップを一気にさかのぼる演出は、スピーディーで目が離せない作り。もたつく老母が主人公なのだが、話の展開は実はとても速い。
才長けたジャーナリストの 読ませる原作ゆえだろう。
二人の表情の演じ合いが見事。
3回鑑賞。
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追記
ピートのあの拒み様は何故と思い映像を再点検。
部屋の置物にヘブライ文字が入っています。そしてあの髭。ユダヤ教徒ですね、カミングアウト出来ないピートの立場が判明。
キリストの教えと倫理観のパラドックス
原題は、PHILOMENA。主人公である母親の名がつけられています。
この物語はどうやらノンフィクションの小説をもとにつくられているようであり、実話に基づく映画のようです。
舞台はアイルランドのシスターたちが住み込みで働くカトリック教会。10代の主人公フィロミナはある日出会った男の子と一夜の恋に落ち、婚前交渉はもとより、永遠に処女であることを犯し、厳格な規律を破る形で妊娠をしてしまいます。これは罪であり、彼女は重い罰を50年間に渡り受け続けることになります。そんな彼女の最後の行動には頭があがりません。
僕は無神教ですが、キリスト教というと、漠然と愛に寛容なイメージを持っていました。
だからこそこの物語の最後には大きなショックと悲しみ、怒りもとても湧きました。
シスターらにとっての戒律と、人としての倫理観をバランスするあまり見られないテーマを投げかけてくれる映画です。
シスターの生涯を通じた奉仕には心を打たれるものがありますが、人として尊敬はできませんでした。
宗教に対し、広い心で尊重はできますが、人間らしさに背く行い、教えに対しては盲目的になってはならないなと反面教師として教えてくれる映画ではないでしょうか。
観てよかった!ジュディデンチが素晴らしい
赦すこと
事実は小説よりも奇なり。
鑑賞出来て本当に良かった。
母は強しっていうけれど、最早強さとかを超越したもっとずっと大きな宇宙なのかな?SF映画じゃないけど、コスモレベルでのだだっ広さ・大きさ、先ず普通の人間には、到底真似の出来ない凄い事を、あっさりやってのけちゃうところも、尊敬というか神の域。(映画の内容と合わせて。)
事実を淡々と受け入れて行く、このお母さんは、やはりタダ者じゃない。
辿り着いた惨い真実にも、怯む事なくすぐさま受け入れ、罪人さえをも赦してしまう精神の強さ・懐の深さ・潔さに、静かに感銘を受けます。
何でもござれ♪な最強母ちゃん、ここにあり!と言った感じ。(ジュディは、ドヤ顔してないけども。)
最近公開された(スポットライト)もそうですが、こういう問題は昔からあったんですね。
赦すとこ
赦すこと
素晴らしい
ジュディディンチは最高の女優。
眺めの良い部屋も007シリーズもショコラでも他の作品全てがキマッてて大好き!
もちろん今作も凄く素晴らしかったです。
気の強い、優しさを持つ母親役。
騒ぐつもりはないの。
私はあなたのことを赦します。
赦しには大きな苦しみが伴うのよ。
私は人を憎みたくない。
怒りは疲れる。ひどい顔になる。
毎日赦していこう。
言うのは簡単だけど、至難の技ですね。
本当に素晴らしい作品でした。
全85件中、21~40件目を表示














